わたしはまだまだ弱い。
誰かに守ってもらわないと生きていけない。
守れるように強くならないといけないんだ。
朝。
いつものように走り込みを終えて
ホテルへと戻ってきた。
毎日日課となってきた走り込み。はじめは30分でもぐったりだったのにいまでは3時間以上走ってても平気になった。もともと水泳をやっていたから運動はけっこう好きだし走るのは楽しい。
だいぶ街も見慣れてきた。
…まあまだ夜一人で出歩くのは
ダメってヒソカさんに言われてるけど…。
「(ちょっと過保護な気がする…)」
買い物のときのお兄ちゃん事件。あれが気に入ったのかヒソカさんはあれからことあるごとに言ってくる。気のせいかもしれないけどそれからなんとなくヒソカさんが優しい。
嬉しいような…気持ち悪…うん。
それ以上は考えないで
エレベーターに乗って部屋に戻った。
「ただいまです」
「あ、ゆあおかえり◆」
「はいーシャワー浴びてきますー」
「ん」
ソファーに座ってトランプタワーを作っていたヒソカさんに声をかけてバスルームに向かった。汗がー気持ち悪い。走ってかいた汗をシャワーで流す。
この瞬間がけっこう好きだ。
汗をシャワーで流してさっぱり。
今日はどの服着ようかなー
と、引き出しをあける…あれ?
「服が…ない?なんで?」
いつも服をしまってる棚の中が
空っぽになっていた。え、なぜ?
とりあえずバスローブを着る。
「ヒソカさん?服がないです」
「ん?ああそうだったねはい◆」
ぽいっ、と投げられた服を受け取る。
「……………あの」
「ん?◆」
「いい笑顔なのがむかつきます(この服違います!)」
「こらこらゆあ、逆になってるよ◆」
渡された服はこの間の買い物のときに
ヒソカさんがこれなんてどう?◆と
渡してきた超ミニ丈のワンピースだった。
思わず心の声と口に出したことが逆になる。
「なんでこれあるんですか?!」
「ゆあに着せたくて内緒で買っちゃった◆」
「………着ませんよっ?!」
「でも服それしかないよ?◆」
ナンデスト?
「服とかは全部新しいホテルに送ってあるんだ」
「………えーっと?」
「そろそろこの街も潮時だからね。次の街へとうつる為にね◆」
「………はい」
…理由はわかった。うん。
でも…これを…着るの…?
ミニ丈、しかも背中にスリット。
でもこれしかない…さっきまで着てたのは汗で濡れてるからやだし…
「ヒソカさんの服貸してください!」
「ボクのももう全部送ってあるから◆」
「………ですよねー」
「きっと似合うよ◆」
「…うう、嬉しくないです」
ほんとに着るものがないので
どうしようもない…諦めて着ることにした。
「………うわあ」
思ったとおり短い。ちょっとでも動けばみえそう…まだ残ってたタイツを履いて…うんなんとか。背中は……どうしようかな…
―つつ… 「うひゃあ!?」
「いいね◆可愛い◆」
「っひ、ヒソカさん!なにするんですかっ!」
「だって背中丸出しだから◆」
「そういう服だからしょうがないんです!」
絶でこっそり近づいていた
ヒソカさんに背中を指でなぞられる。
くすっぐたくて変な声がでた…不覚。
カーディガンもないから送ってあるんだろうし、とりあえず背中は諦めることにした。
上から下までみられて恥ずかしくなる。
「うん。似合ってるよ◆」
「……お世辞、ありがとうございます」
「素直じゃないなあ◆」
三ヶ月ほど滞在したホテルをあとにする。
この街からもでるみたいなので
ちょっと寂しくなった。