というわけで、外はもうすぐ夕暮れ。
夕日が沈みかけて薄暗くなっている。
「…も、無理…ぜぇ…です…っ」
「んーゆあ体力なさすぎ◆」
「っこ、れ…はあ…でもっ…水泳して…まし、たっ」
「筋トレもしなきゃだね◆」
念というのを使うのは疲れる…!
ちょっと練を続けただけでぐったり。
床に座り込んでしまう。足がガクガクしてる…!
水泳で400mとか平気で泳げるぐらいには
わたし体力あるはずなんだけど…っ?!
生命力であるオーラを使っているので
当たり前なのかもしれない…
「しょうがないか◆」
「っはあ…わた、しっ…普通のぜえ、女の子っ…ですか、ら」
「動ける?」
「っ…ん」
足に力をいれてみるが動かない。
「無理…っそう、です…」
「ん◆」
―ひょい 「っわあ?!」
「…ゆあ軽いね◆ご飯食べてる?」
「お、おおおおろしてっ下さいいい」
いきなりヒソカさんに抱き上げられた。
ええええええ、なにこの状況ううううう?!
目の前にはニヤニヤ笑ったヒソカさんの顔。
近い…近いです…!恥ずかしいっ…!
なんとか抜け出そうとするが
体に力が入らないのでどうしようもなかった。
「動けないんだろう?◆」
「っ…そうですけど!」
「とりあえず…シャワー浴びるかい?」
「あ、はい」
そのままバスルームに連れていかれる。
うわあ…下みたら意外と高かった。
ヒソカさん背、高いもんなあ…
脱衣所におろされる。
汗で服がはりついて気持ち悪かった。
「…………あの?」
「ん?◆」
「ん?じゃなくって!!シャワー浴びるので、あの…出て行ってください」
「え?」
なんでそこで不思議そうな顔するの?!
「動けないだろ?◆」
「あ…そう、ですけど!!」
「手伝ってあげる◆」
「?!いいいい、いいです!気持ちだけで!!結構です!」
「そうかい?」
なんでちょっと残念そうなのっ?!
しぶしぶ、といった感じででていくヒソカさん。
………変な人だ。
立ち上がれそうにもないのでしゃがんだまま
引きずるようにしてなんとかした。
「…はあ、あした絶対筋肉痛だ…」
時間はかかったがシャワーを浴びれた。
疲労で眠気が襲ってくる。
とりあえずタオルで髪をごしごしふいて
すぐそばにおいてあったバスローブを着る。
着ていた服を洗濯機にいれてスイッチを押す。
「…っよし」
なんとかつかみ立ちする。
足は棒のように動きが鈍いが
なんとか歩けないこともない。
ゆっくりバスルームからでる。
きょろきょろ辺りを見渡すと
ヒソカさんはソファーに座っていた。
「ヒソカさん」
「ん、ちゃんと浴びれたんだね◆」
「はい、なんとか」
ソファーまでなんとか近づくと
崩れるように座った。はー疲れたー。
「ちょっといまから仕事に行ってくるから◆」
「お仕事…ですか?」
「そ、殺し◆」
「……そう、ですか」
さらっ、と当たり前のように言われて言葉に詰まる。
「ご飯食べれるようならルームサービス頼んでいいから◆」
「はい」
「先に寝てて。たぶん遅くなる◆」
「はい」
「明日も朝から修行するからね◆」
「はい」
よしよし、と頭をまた撫でられる。
お金を机の上においてヒソカさんは立ち上がった。
「いってらっしゃい」
「…ん◆」
「…こんなこと言うの、あれかもしれませんけど…」
「?なにかな」
「あの…その、気をつけてください…」
「!うん、いってくる◆」
一瞬びっくりしたようなヒソカさん。
やっぱり変なこと言っちゃったかな…
たぶん余計なお世話だよね。
後ろ姿を見送ってからソファーに深く座る。
ごはん…その前に髪の毛乾かさなきゃ…
と考えたが疲労とともに襲ってくる睡魔。
そのまま睡魔に身を任せて眠りにおちた。
「バイバイ◆」
―ザシュッ!
「…なにヒソカ。今日気持ち悪い。あ、いつもか」
「◆相変わらずひどいねキミ◆」
「ずっとニヤニヤしてるよ」
「ああ◆ちょっとね◆」
「ふうん」
「興味なさそうだね◆」
こっちにはまるで見向きもせずに
目の前の人を殺していくイルミ。
「いってらっしゃい、っていい言葉だよね◆」
「………」
「初めて言われたんじゃないかなー◆」
「例の拾い物か」
「ん?そうゆあね◆」
「………ふうん」
「あ、イルミに会わせてあげるって言ったけどやっぱりやめようかなー◆」
「興味ない」
「そう◆」
「(ヒソカがねえ…珍しい)」
「だから早く終わらせて帰るよボクは◆」
「勝手にどうぞ」
そのままヒソカの姿が暗闇に消える。
遠くからはヒソカにやられたであろう
ターゲットたちの叫び声が聞こえる。
「…ゆあ、ね。」
イルミのつぶやきは誰にも届くことなく
闇に溶けて消えていってしまった。