くろあか | ナノ

 四十五話 これから




「ここが広間で、こっちが客間です。」
「はい」
「上は父様や母様のお部屋があります。地下には拷問部屋があります。こちらは近づかないで下さい」
「は、はい」
「何かあれば執事かメイドに言ってください」
「はい」
「あとは外の森」
「屋敷も広いけど、森もすごく広いですよね…」
「そうですか?」

不思議そうに聞かれて住む世界が違うのかなぁ…。と大きなお屋敷を見渡して改めて実感してしまう。ゾルディック家は所謂豪邸。屋敷も広いし、外の森も広大だ。

執事やメイドがいたるところに居て、入口には守衛さんだって居た。一般人でマンション住みだったわたしとは、住む世界が違って当たり前なのかもしれないけれど。

「森にはたくさんの猛獣がいます」
「えっ、そうなの?」
「はい」
「そっかぁ…じゃあ森で修行させてもらいたいな…」
「だからむやみに出歩いては…ってはい?」
「あ、修行とかダメかな、やっぱり…」
「いや、そうじゃなくて…戦えるんですか?」
「うん」
「………」
「えっ、ホントだよ?!」

じとーっとなぜか怪訝そうな目でカルトちゃんに見られた。そ、そんなに弱そうに見えるかな?!

「い、一応試しの門…だっけ?3の扉まで開けられたんですよ?!」
「…本当ですか?」
「あ、疑ってる!わたし、これでもね…」
「あ、こんなところに居た」
「兄様」
「あ、イルミさん!お話は終わったんですか?」
「うん」

カルトちゃんに弁解しようとしているところで、廊下の角を曲がってきたイルミさんと遭遇する。こうやって二人並んでみるとやっぱり似ているなーと思う。

イルミさんは綺麗で、カルトちゃんは可愛い。二人共肌が白くて目が大きくて…自分と比べてため息を吐いた。

「カルト母さんが呼んでる」
「わかりました」
「あ、カルトちゃん案内ありがとうございました!」
「…いえ。では失礼します」

お辞儀して去っていく後ろ姿を見ながらやっぱり可愛いな…と口元が緩む。仲良くなることは難しいかもしれないけれど、それでも少しでも会話できてよかった。

「ゆあ」
「はい?」
「どうせ気づいてないだろうから言うけど」
「はい」
「カルトは男だよ」
「はい。…………ってはいっ?!」
「あ、ゆあやっぱり気がついてなかった」
「は、え、おとこの…こって…えぇええっ?!」
「うん。男」
「あんなに可愛いのにですか?!」
「母さんの趣味」

まるで頭を殴られたかのように衝撃が走る。

だって、男って!
あの可愛さで男って!
わたしより女らしくて男って!

「言い忘れてたけど」
「うう…まだ何かあるんですか…?」

これ以上ショックな何かがあるのだろうか…もしこれでイルミさんも実は女でしたー!とか言われたら立ち直れる気がしない!

「カルトには念を教え始めてるから念の話を話してもいいけど、もう一人の弟に念の話はしないでね」
「…念の?なんでですか?」
「まだあいつには早いからね」
「そうなんですか?」
「うん。まだまだ暗殺者としても未熟だからねキルは」
「キルア…くんでしたっけ?」
「そう。あとあんまり仲良くなるのもダメだからね」
「仲良く?」
「キルはまだ感情を消しきれてないからね。わがままだし、よく屋敷を抜け出したりするし。全く手がかかるよ」

そういえばキキョウさんにいろいろと服を着せられているときにも、そんなことを言っていた気がする。

カルトちゃん…いや君って呼ぶのが正解なのかもしれないけれど、を見ている限りカルトちゃんは感情の起伏が薄かったけどキルア君はわがまま…なのだろうか。

イルミさんやカルトちゃんみたいな男の子を想像して、その子が笑ったり、泣いたり、わがままを言ったりする様子が想像できなかった。

(すっごい違和感がある…!)

イルミさんもたまに呆れたり、馬鹿にしたり、鼻で笑ったりするけど、笑顔は見たことがないし…と思いながらイルミさんを見つめていたら何?と聞かれてしまった。

なんでも!と慌てて視線を逸らす。

「そうだ。親父がせっかく少しの間滞在するなら、修行でもしていけばいいってさ」
「あ、それなんですけど、森で修行させてもらいたいなってお願いしようと思ってました!」
「そう。いいんじゃない?」
「ありがとうございます!」
「でも念の修行はダメ」
「え!」
「さっきも言っただろ。キルにはまだ教えてないって」
「あ、そうでしたね…」
「ゆあはまだ体術的な面が未熟だから、そっちを鍛えたほうがいいと思うよ」
「そうですか…イルミさんがそう言うなら」

本当はまだ使いこなせていない『乙女のリボン』と『魔女の写鏡-トリックミラージュ-』を完璧に使いこなせるようになりたかったのだけど…まあ、イルミさんがそう言うならその方がいいのかもしれない。

この世界にやってきてまだ1年ちょっと。体力だってついてきたけれど、どうしたってまだまだ経験不足だし。ここで学べることは多そうだから今、わたしにできる精一杯の事をしよう。

「その代わり、俺の仕事も手伝ってもらうからね」
「イルミさんの、お仕事ですか?」
「うん。暗殺とか」
「はいわかりました師匠!」
「………」
「いっ?!」

無言で頭にチョップされてしまった。
わたしは真面目に言ってるのに…。

(いつか弟子だって認めて欲しいなぁ…)

わたしがまだまだ弱いからダメなのかもしれない。もっと強くならないと…!

「俺、弟子はいらないから」
「えー…ダメですか?」
「……上目遣いしてもダメ」
「してないですよ…って痛い痛い!」
「ゆあが悪い」
「理不尽です!」

なんだか最初は不安だったし、いろいろとあったけどゾルディック家に滞在している間、修行にイルミさんの仕事の手伝いに忙しくなりそうです…!

「あ、そうだイルミさん!」
「ん、何?」
「ヒソカさんの携帯の番号教えてください!」
「………無理」
「拒否された?!」



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