くろあか | ナノ

 三十三話 再会



会いたかった人との再開
新しい人との出会い

知らない内に広がっていく世界


二階のフロアに入るとすでに人がたくさん集まっていた。中央にはフルーツやサラダや料理が並んでいてそれをシェフがお皿に盛って渡していく。

部屋の一番奥には小さいステージがありたぶんあそこで館長からの挨拶があるんだろう。ウエイターさんが飲み物を配ったり貴族同士で談笑していたりがやがやと賑やかだ。

「飲み物もらってくるから、ちょっと隅で待ってて◆」
「はーい」

ヒソカさんに言われた通りに隅に下がって壁に寄りかかる。ちら、と上目使いに辺りを見回した。

…こういう雰囲気苦手だなぁ。もともと社交的な方じゃなかったしこういうざわざわとした人ごみも好きじゃない。

ヒソカさん早く戻ってきてよーと思いながら下を向いてスカートのレースを弄っているとその視界の中に影がかかった。ヒソカさんかな?と顔を上げると全く知らない男の人が立っていた。

「お嬢さん、お一人ですか?」
「…えっと…あの、その」

25、6歳ぐらいの男の人。黒いスーツを着ていて紳士的で友好的な笑顔。

どうしよう…!こうやって話しかけられた時ってどうやって対応したらいいのかな?!

「どうしました?」
「あの、連れ…えっと、お兄様が…」
「………ヒソカの奴、お兄様とか呼ばせてるのか」
「…え?」

相変わらず悪趣味な奴。なんて嫌そうに呟く。聞いたことのある声に驚く。最初の優しい声とは全く違う声。いや、そんなことはどうでもよかった。懐かしい声。無感情で、冷たくて、でもどこか優しい。

「久しぶり。ゆあ」
「…イルミ、さん…なんですか?」
「うん」
「………っ!」

頷くと同時に男の顔が半分だけイルミさんの顔へと変わる。

―ガバッ! 「!」

「イルミ…さん」
「(……積極的)」
「会いたかったです…」
「(…なにこれ可愛い)」
「ずっと、連絡できなかったから…」
「ヒソカに邪魔されてたからね」
「そうなんですか?…でも、会えてよかった」

一年ぶりに会えたのが嬉しくて嬉しくてイルミさんへと抱き着く。頭を撫でる手は冷たいけど優しくてぜんぜん変わってなかった。

わたしはこの一年で変わってしまったからイルミさんの変わらない手の温度がとても懐かしくて、すごく嬉しくなる。

「それはイルミさんの念ですか?」
「そう」

そう言うとまた顔がメキメキ…と変わる。…すごい。ちょっと怖いけど。少しだけ名残惜しかったけどあまりくっついていると周りから怪しまれそうなのでイルミさんから離れた。

「ゆあ綺麗になったね」
「っう、あ…この服の、せいですよ…」
「そんなことない」
「……あの」
「前よりちょっと痩せた?ちゃんと食べてるの?」
「食べてますよ、ちゃんと。イルミさんこそちょっと背、高くなってませんか?」
「そう?」
「はい。それから…前より…っなんでもないです!」
「なに?」

不思議そうに首を傾げる。姿はイルミさんじゃないのに行動とかはそのままイルミさんだからなんだか違和感があって変な感じ。前よりかっこよくなった、なんて恥ずかしくて面と向かって言えないよ…

「気になるから言ってよ」
「な、んでもないです!…その顔で近づかないで下さい…」
「いや?」
「イルミさんはいやじゃないですけど…その顔は知らない人なので、いや…です」
「…そっか」

頭をよしよしと撫でられる。顔は知らない男の人ででも声はイルミさんで、変な感じ。でも嬉しいからされるがまま。

「なんでイルミがいるのかな?◆」
「あっヒソカさん!」
「仕事」
「ゆあ、ほらこっちおいで◆」
「え、えっと…」

手をヒソカさんに引かれてイルミさんから離される。…なんか二人とも前より険悪になってませんか?

「たまたま別の仕事で一緒になっただけ」
「わざとだろ◆」
「どっちでもいいだろ」
「えっと!イルミさんのお仕事って?」

小さな言い争いが始まったので慌てて間に割ってはいる。二人の視線が刺さってちょっと痛い…

「暗殺だよ」
「あ、じゃあ一緒ですね」
「ターゲットはちがうけどね」
「その顔は?」
「ターゲットの側近のうちの一人」
「じゃあ、あんまりわたしたちといるとまずいんじゃ…」
「ま、もう戻るから」
「…そうですか」
「この仕事が終わったらまた会いに行くよ」
「はい!」
「(来なくていいのに◆)」

では、失礼しました。と他人行儀にお辞儀をしてイルミさんは行ってしまった。まさかイルミさんに会えるとは思ってなかったから嬉しかった。ヒソカさんの機嫌が少しだけ悪くなったのがめんどうだけど。

「ほらゆあ飲み物」
「ありがとうございます」
「このあと挨拶あるみたい」
「はーい」
「挨拶が始まったらボクは護衛の念能力者を殺りに行くから◆」
「じゃあ挨拶が終わったらわたしも近づいて片付けます」
「終わったらいつものように◆」
「はい」

挨拶がまだ始まらなさそうだったので軽くフルーツをつまみながらヒソカさんと話す。あの婦人はどこそこの有名な貴族でとかあの男はすごい酒のみでとかそんな話しを聞いているうちに照明が暗くなる。

「始まりましたね」
「じゃあまたあとでね◆」
「はーい」
「「お兄様お気をつけて…」って言ってよ◆」
「……言いません」
「残念◆」

ヒソカさんは頭をぽんぽんと撫でてからいなくなった。ほんと黙ってればイケメンなのに…。

「えー館長のミゲル様からの挨拶です」

ライトアップされたステージをみる。ターゲットがステージにあがる。拍手が起こったので適当に合わせてわたしも拍手をする。

さて、どうやって近づこうかなー。



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