人を不幸にする神様なんて、神様のすることじゃないっていう人が多い
いなくなれ、出て行け、と毛嫌いする。
それに福の神いるから皆そっちを崇めてしまう
そりゃそうだ、皆不幸に、貧乏になりたくない。
人に災厄をもたらす悪神の一種、人や家に取り憑いてその財産を食いつぶし、さらに金運そのものも追い払ってしまう。

「……はぁ…嫌だなぁ……」

目の前のそびえ立つ学園、百鬼学園。
今日からここの学園の生徒になる。
入学式をするために体育館へ入れば、首が長かったり、骸骨だったり、提灯だったり多様な妖怪が全国から集まっている
人目を気にしながら一人隅っこでパイプ椅子に座ってただただ俯く。
神として役立たずだからって家から追い出されて、一人でフラフラしてたら学園長に見つかって生徒になるよう促されてしまいそのまま来てしまった
嫌だなあ、なんで来ちゃったんだろうか、制服まで頂いてしまった。
ただの貧乏神なのに、学校に行ってしまえば学校が不幸になってしまうのに、なんでまたきてしまったんだろうか。
どうせここも追い出されてしまうんだ、適当に金持ちの家に忍び込んで生活すればいいじゃないか。

「ねぇっ」

今までそうしてきたんだし、友達もできないんだし、福の神みたいになれるわけもないんだ。
いやあの人は弟が大事だからあたしのこと毛嫌いしていた、みーちゃんが怪我するとお前のせいだっていつも怒られていたし

「ねぇってば、」

思い出しただけで胃が痛くなってきた。
気持ち悪いし、どうしよう。トイレ行きたい。

「おい」
「ひっ…!!!」

ガッと肩を掴まれて横を振り向けば黒髪の可愛い女の子が怪訝そうな顔をしている

「大丈夫か?顔色悪いぞ」

か、可愛いい女の子が貧乏神のあたしを心配してる。肩に手をかけている。
人が、いや人じゃないけど妖怪だけど、あたしに話しかけてきた。
ちょっとキリッとしてて可愛い。綺麗な黒髪だしなんの妖怪なんだろうか。

「あ、…あの…」

声を出した瞬間バキっと彼女のパイプ椅子が崩れ落ちた。
サァッと血の気が引き尻餅をついてしまった彼女が痛そうに腰に手を当てて顔を歪めた。
やってしまった。傷つけてしまった。

「なんだぁ…?椅子脆かったのか…?」
「ご、ごめんなさい…!!」
「…は?」

入学式が始まるというところで立ち上がり体育館から飛び出してしまった。

『友達できるかな、貧乏神でも、幸せになれるかな。』
『なれないよ。お前はどう頑張ってもできないんだ貧乏神だからね』

あたしは福の神のようにはなれない。
人を貧乏にしてしまう神様。
友達なんてできるわけがない。
あたしが声を出すだけで、歩くだけで、存在するだけで、周囲を不幸にしてしまうんだ。
不幸になんてしたくないのに、こんなことしたくないのに、ほんとは福の神になりたかったのに

「うぇええっ…!!」

もう嫌だ。不幸にさせたくないのに貧乏にさせたくないのにこんなのもう嫌なのに
ゴロゴロと天候が悪くなりだし分厚い雲が学園の空を覆い始めた

「貧乏でごめんなさい…!!」

入学式初日晴天だった空が曇天になり大雨を降らした
もちろん天気予報で降水確率0%だったため誰ひとりとして傘を持ち歩いていなかった
貧乏神はそのまま姿をくらまし、不登校生徒になってしまったのだ。
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