お昼休みのランデブー - 1
「ねーぇ、千郷ちゃん。今日は良い天気だし外でお昼食べない?」
『外?うんっ、良いよ、食べよ食べよ〜』
とある日のお昼休み。
いつも隣の小春ちゃんとそのままの席でお弁当を食べているんだけど、今日は天気が良いからと言って外で食べようと誘われた。
あ、もちろん一氏くんも一緒ね。
6月となった今、なかなか晴れる事がなかったけど、今日は珍しく晴れていて。
私達は、中庭にあるベンチとテーブルへと向かって教室を後にした。
そう。
それこそが、今後続くお昼休みのランデブーの始まりだった。
case 4:お昼休みのランデブー
『んー!久々の晴れは気持ち良いねっ』
「そうねぇ。何だかんだ言って、もう夏だものねぇ」
「小春ぅ〜、今年の夏も沢山2人の思い出作るでぇ〜」
「んもぅ、千郷ちゃんの前で恥ずかしいやないのぅ」
「なんやねん、大垣!お前、空気読めや!あっち行けっ!」
『はいはい、ワロスワロス』
もうすっかりお馴染みのこの展開。
というか、この二人はどれ位本気なのか?
あまりの徹底ぶりに、本物のモーホーなのかと疑ってしまう。
いやいや、良いんだよ。
世の中男の子人が余ってるって言うし、ここでモーホー共がくっついてくれれば、男女上手く割合が取れるって訳で。
「良い訳ないやないですか、先輩アホちゃう」
『え?』
急に後ろから声が聞こえたかと思うと、その声の主はすとんと私の席の隣に座った。
もちろんその声の主は生意気ボーイ・財前くんだ。
購買で買ったであろうパンを口に入れつつ、気怠そうな顔をして財前くんは小春ちゃんに向かって文句を言った。
「…なんやねん、至急中庭に弁当持って集合言うから急いで来たんですけど。このメンツは何なんすか」
「あらー、良いじゃない、久しぶりにみんなでお昼食べれないかなって思ったのよ」
あ、そうなの?
だから今日わざわざ外で食べようって言ったのかな?
すると、またまた後ろから聞き慣れた声が聞こえてきて。
「何や、もうみんな集まってるんか。待たせてスマンな」
「わっはっは!真の主役は遅れて登場するっちゅー話や!」
振り向くとそこには白石くんと謙也くんがいて。2人も何食わぬ顔で私の隣の席に座ってお弁当を広げ始める。
て、あ、あれ?
そこでやっと違和感に気付いた。
『小春ちゃん。これ、まさかテニス部の集まりなんじゃ…』
そう。どう見てもここにいるのはみんなテニス部のメンバーで。
「そうよー、蔵リンも謙也ちゃんも、私が呼んだのよ。せっかくだし、みんないたら楽しいじゃない」
「俺は小春と2人きりが良かったのを我慢してやったんやで!」
そう言ってじろっと恨めしげに睨む一氏くんに対して財前くんが「あんたら2人消えてもええですわ」とボソッと言った。
いやいやいや。
そういう問題じゃなくて!
明らかに私、場違いじゃない??
『あ、私、良かったら席外そうか?せっかくだし、内輪で盛り上がった方が良いからさ』
そう言って、お弁当を持って立ち上がった時だった。
財前くんにばしっと腕を掴まれて動きを制止される。
ビックリして財前くんを見ると
「別に…先輩ならここにいてええんとちゃいます?」
と言ってくれて。
続けて白石くんも「大垣さんかて、すっかり内輪やん」と笑顔で言ってくれるし、小春ちゃんは「私だけじゃ華が足りないから、千郷ちゃんもいなきゃダメよぅ」とウインクしていて。
謙也くんに関しては「同じ穴のムジナっちゅーやつやで!」と笑顔で意味不明の事を言っていたから、そっと無視しておくコトにしたけど。
…でも、嬉しい。
私、ここにいても良いんだ。
そう思うと急にむず痒くなってきて、照れながら着席した。
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