好きな人
俺は○が好きだ。でも○には好きな人がいるらしい。しかも元の世界に。しかもすっごい強くてかっこいいんだって。へーふーん。
「その人ってどんな人なの?」
ティファが○に聞く。やめて俺の失恋加速させないで!なーんて思っても言えないから俺も黙って○の言葉を待つ。だって気になるっちゃ気になるし…あぁでも聞きたくねぇ…。
「ラグナ、何百面相してんだよ」
「大人には時として百面相したくなるときもあるんだよ、ヴァンくん」
ヴァンに適当な返事を返しながらも耳は○の方に向ける。顔は向けない。なんか好きな人を思い浮かべてる○を見るのはきっちぃし。
ドキドキしながら待っていると、うーん、と唸る声が聞こえた。
「そうだなぁ…どんな人って言われてもな」
「見た目とか性格とか、ね?」
悩んでいるらしい声にティファが興味津々といった風に助け舟を出す。見た目に性格…○くんの好みがわかるのか…と待っていると、暫くしてぽつぽつとその人のことが話されはじめた。
「見た目…黒髪で目が空色…綺麗なんだ、凄く。それからかっこよくてたまにかわいいな。子犬っぽいというか…落ち着きがないけど頼りになるし」
話されはじめたんだ、けど…。
「筋肉もあるし、力も強い。背は俺より高いな。というか俺を担いでモンスターから逃げられるくらいだからなあ」
なんかおかしくね???
思わず○の方を見る。ティファとヴァンも「ん?」という顔で○を見ていた。当の本人は好きな人のことを思い出しているせいか少し懐かしそうに、それからちょっと照れたような顔をしていた…うっ、つ、つらい…じゃなくて!!
まさか○の好きな人って…
「えっと…えーっと、あの、違ってたら、ごめんね?…好きな人って、男の人?」
ティファが恐る恐る聞く。そう、俺もそこ気になってた!!
もしかしたらよほど腕っ節の強いお嬢さんかもしれないし…と思いつつも男の○を担げたり筋肉もりもりで背が高いとか男だとしか思えねぇし…。
だけどそんなことをぐるぐる考えている俺やティファたちをよそに、○はごく普通に頷いた。
「そうだな」
ま、ま、まじかー!!!
…喜べばいいの?これ?だってこれって俺にもチャンスがあるんじゃ…って元の世界に好きな奴がいるならそりゃねーか…。
「あ、そ、そ、そっか」
「○ってそっち系なのか?」
「ヴァンくん!!!」
「どうだろう…だがそいつに好きって言われて嫌な気もしなかったしそれから俺も好きになったから、抵抗はないのかな?」
とりあえず俺は皆に見えないところでガッツポーズしておいた。この世界にいる間だけでも、好きって伝えてもよさそうだ。
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