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旅に出たい


星の胎動。
そんな場所でひとりぼっち、寂しそうに立っていたから毎日毎日話しかけに行った。何も覚えていない真っ白な子。

「○〜!ちゃんと生きてっかー?」

名前を呼べば数秒遅れてから俺の方へ顔を向ける。ぼんやりとしていて少し心配になりそうな表情だ。綺麗な顔をしているのに、なんと言うかイマイチきりっとしてねーんだよなあ。なんて思いながら近づいていく。
緑色のライフなんちゃらが流れている場所で、浮いた岩場の一角に腰を下ろしていた○。その隣へ腰を下ろして、じっと俺を見る瞳に恒例の質問をする。

「さて今日の質問です!」
「ん」
「ご飯食べたか?」
「うん」
「そっかそっか!じゃあ次は〜…寝た?」
「あぁ」
「オッケーオッケー!んーあとは、そうだな…俺が帰ってからちょっとはどこかに行ったり動いたりしたか?」
「…少しは」
「ならよし!」

最後は若干間が空いてたな。ちっとばかし怪しいけど、ま、本当に少しは動いたんだろう。その証拠に昨日いた岩場と一つ離れた場所にこうしているんだし。

「さて○くん!最後の質問です」
「…」
「今日こそ俺と旅に出ようぜ!」
「…質問になってない。そして断る」

そう言って顔を逸らした○は少しうんざりしたような表情をしていた。毎日毎日断ってることを何度も言われているんだから仕方ない、にしても少し傷つく。普段表情が変わらない分、変わった時の破壊力が凄いからだ。そうそう、この○という子は表情がとても少ない。ついでに返答はしてくれるけど反応が薄い。物凄く怒ったりだとか、ましてや物凄く笑ったりだとかしない。ただ、少し寂しそうな感じはしていた。
だからこうして俺は毎日誘ってるわけだけど。

「どーしても一人がいいのか?」
「…あぁ、仲間はいらない。一人がいい」

この一返答だけ。どうしても、どーーーーしても首を縦に振らない。それだけ、誰かと関わるのを嫌がっていた。俺には会話してくれる程度には関わってくれるけど。

「一人より二人が楽しいぞ〜?」
「…楽しくない、他人と関わるのは嫌いだ」
「でも俺と一緒にいてくれるだろ?無理に帰らしたりしねえし、話してくれるし…それって俺は嫌いじゃないってことじゃねっかよー」
「……」

黙り込む○。かわいいなおい。

「素直だねぇ〜。嫌いじゃないってことは一緒にいて楽しいってことだぞー?」
「…」

また黙り込む。眉を少し寄せて前を睨んでいる。オレのことを見ようとしないようにしているのがまるわかりだ。やっぱりかわいいな!

「照れ屋さんだな」
「…うるさい」

とりあえずよしよしと頭を撫でておいた。
あー、早く一緒に旅に出たいなあ。見せたいものも沢山あるし、何て考えながら、その日は夜になるまで○と一緒にいた。

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