「リン!!」
ユーゴは彼女の名前を大きな声で呼んだ。
ずっと捜していたんだ。
途中で知り合いのクロウに会ったものの、情報が掴めなかった。
クロウが言った言葉を信じ自力でリンに会いに来たのだから。
「リン、ずっとどこに居たんだよ」
ユーゴはとても嬉しそうに、リンに問う。
そんな風に幸せそうにしているユーゴとは、正反対にリンは不安そうに俯いている。
「…………。」
「どうしたんだ?」
神社らしき場所の一角。周りには誰もいない。さっき俺に話し掛けた子どもは息を潜めているのか。そんな事は分からない。
暖かい日差しが樹々に当たって作られた陽だまりが二人を包み込む。
眠くなった時、鳥肌が立つのを感じた。
「ユーゴにもう一度、会えて良かったわ。」
久し振りに聞くリンの声は、初めて会った時と変わらなかった。
「そんな最後の様な事を言うなよ……。」
「なっ、ユーゴこそ勝手に決めないでよ!」
一瞬、リンの表情が柔らかくなった。それを見て、ユーゴはホッとした気持ちになる。今は笑顔では無いけども、そうなって欲しいと思った。
(良かったぜ……。やっぱりリンは笑った顔が一番合う……って何を考えているんだ!)
顔と耳が熱く感じる。
「ユーゴ……。」
「何だ?」
「顔が赤いわよ。」
「……!!」
やめてくれ!と言わんばかりに手のひらで顔を覆った。
その手をそっとリンは触れた。
「……リン?」
思わず顔を上げ見た、リンの表情はまた泣きそうだ。
「どうしたんだよ……何かあるのか?」
リンはコクコクと頷いた。そんなリンをユーゴは抱きしめた。
ただ何も言わず、リンを抱きしめていた。気が付けば、夜になっていて、リンの姿はなく再会はしてない。また、クロウとも会えなくなった。
だがその後、シンジと言う人と会う事になる。
数年後、とある都市で開かれたチャンピオンシップ。
そこに、白いDホイールで現れた青年。観客は彼の名前を叫び、声援を送っている。
『ユーゴ!ユーゴ!』
『がんばれー!』
ユーゴはその声援に手を振り、応え、またDホイールのハンドルを掴み走り出した。
ーーー
かつて、ユーゴが住んでいた村はその昔、一人の少女が神様として祀られたらしい。そして、この村で亡くなった子ども達は皆がみな、その少女の元へ行ったという。
しかし、そのせいか新しい住民が現れることが減少した。
ただ、その少女と子ども達は新しい住民を待った。
長く長く長く、息を潜めて。
自分たちの仲間になりそうな人を。
そして、ユーゴが現れた。
一目見て、その少女ーーリンは惚れてしまった。だが、その帰りリンは神様として役目が終わる事を知った。
もう会わない、とクロウに伝え消えたかった。なのに……ユーゴが来てくれた。ただただ、嬉しかった。
次もまた人間で、ユーゴに会えるかしら?
ただただ、待つだけの生だった。
けれど、最後は華やかな日々。
リンはそっと目を閉じた。
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07