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それは、今からほんの二十分前に起こった事だ。

海軍本部に着いたニーナがコソコソしながら真っ先に向かったのは、海軍本部大食堂であった。将校クラスに見つかれば、またきっとセンゴクへの報告やらなんやらでかなりの時間が取られると予想し、その前に少しだけ長い航海の疲れをお気に入りのデザートで癒そうと考えてのことなのだが。

「うん。美味しい」
「あの、ニーナ嬢。いいんですか、こんな所に居て」
「いいんですよ。ちょっとくらい息抜きがあっても」

「オォー。その息抜きに行ってきたんじゃなかったのかい〜」
「グフッ!?」

唐突に後ろに立った聞き覚えのある声に、ニーナは驚きでむせる。

「ボルサリーノさん。脅かさないでくださいよ」
「さっさと報告に来ない君が悪いんだよォ。それよりもニーナちゃ〜ん」
「はい」
「君ィ、わっしに謝る事があるんじゃないか〜い?」
「はっ?」

唐突に細められた瞳に、ニーナは対象的に目を丸くする。が、心当たりが無い為に首を傾げるのが精一杯だ。

「何時でも、わっしに連絡しろって言ったのに。オー、とうとう一回も掛かって来なかったんだけど。電話」
「えっ?だって、クザンにちゃんと定期は……」
「そういう事言ってるんじゃないよぉ」

そう言ったボルサリーノがスッと手を延ばしたかと思えば、一口分だけ欠けたアイスクリームの乗った皿が、その手に渡った。

「あっ!」

とニーナが悲痛な声を上げた頃には、ニーナを楽しませるはずだったそれが、ボルサリーノの胃に納まっていた。


***


「そ、そこからは、その。怒ったニーナ嬢と、まるでその怒りを煽るような台詞ばかり言う黄ザル大将の戦闘が始まってしまいまして。その、あまりにも壮絶な戦闘の為、我々も手の出し様が……」

ダンッ、とセンゴクの拳が執務卓を叩いたので、これを報告に来た不運な勇気ある海兵は閉口することを余儀なくされた。
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