時は限りなく | ナノ


17

初めてのグランドラインの航海を、恐れるでもなく、陽気に楽しむ海賊団は、次の島であるリトルガーデンにたどり着いた。

「あれかァ〜〜つ!“グランドライン”2つ目の島だァ〜〜っ!!」

リトルガーデン。その名前を聞いた時から何かが引っかかっているのだが、ニーナはなんだったかと思い出せずに居た。

ギャアギャアと不気味に鳴く鳥や、グルルルと呻く猛獣の声に誘われるように、麦わらの一味は島の川へと船を進める。

「普通じゃないわっ!絶対普通じゃない!」

そう言って危険だと主張するナミは、上陸はせずに船の上でログが溜まるのを待つべきだと意見した。そこでニーナは、漸く頭にあった引っかかりの正体を思い出す。

(あっ、そうか。この島……)

「冒険のにおいがするっ!!」

イキイキした顔でルフィが早速上陸してしまった。船でじっとしているよりは、とビビもカルーに乗ってルフィに着いて行ってしまう。ログが溜まるまでの気晴らしだと言って。

が、そんな呑気に構えている場合ではない。この島のログが溜まるまでの時間は、一年だ。

「ナミ!」
「なに?まさかアンタまで冒険に行くなんて言わないでしょうね」
「私ちょっと島を出るわ」
「はああああ!?」

ミス・オールサンデーの言っていたことが漸く分かった。どうしてもっと早くに思い出せなかったのだろうか。
悔やんでも悔やみきれないが、今は説明している時間すら惜しい。

「説明はあとで。すぐに戻ってくるから」
「戻ってくるって…… まずどうやってこの島から出る積もり?」
「それは…… ゾロ!」

目当ての人物を探せば、これから散歩へ行こうかと首を鳴らす男がこちらを向いた。

「お願いがあるんだけど。そこら辺の木を数本、適当な丸太にしてくれない?」
「あァ?まあいいが」

そう言ってゾロが腰の刀を抜き、手近に生える木へ振りかざせば、あっという間に丸太が出来た。

「ありがとう」
「ああ。もう用はいいのか?」
「うん大丈夫」
「なら散歩に行くか」

そう言って一歩進み出たゾロにサンジが食料調達を頼むべく引き止める横で、ニーナは船内からロープを持ってきた。

ゾロに作って貰った真新しい丸太を並べ、ロープで固定すれば即席のイカダの完成だ。

「うん。これでよし」

速攻で作ったが、まあまあの出来栄えだ。イカダを満足そうに川に浮かべるニーナに、ナミとウソップが声を上げた。

「これでよしって、アンタこれをどうしようっていうのよ」
「そうだぞニーナ。大体、この島を出てどこに行くってんだよ」

心配してくれるのは有難いが、自分達がこの島に滞在する意味は無いのだ。ビビのためにも、一刻も早くログをなんとかしなければ。

「海へ出ればなんとかなるから。今日中には戻るし、この島に居るのは猛獣と恐竜くらいだから。じゃあ、ちょっと行ってくるね」

「えっ?なに、よく聞こえなかった。ちょっとニーナ!?」
「おーい。この島には何が居るって?」

急がねば、とニーナは見送ってくれた二人に手を振り、イカダで川を下った。




***



海へ出て少ししてから、ニーナは荷物のリュックから電伝虫を取り出す。とりあえず、クザンへ掛けようとダイヤルを回そうとしたところで、ふと思い立ち手を止める。

あの勘の良い海軍大将のことだ。ここで自分がアラバスタへのエターナルポースを所望すれば、何かあるのではと察するのは目に見えている。
が、今回の件はあまり海軍を巻き込まない方が良い気がする。

暴動を止める鍵とも言えるアラバスタ王国王女ビビは、麦わらの一味と一緒に居るのだ。海軍が出て来れば、話がややこしくなる。そもそも、海軍が動けばクロコダイルは計画を早める可能性が高い。

つまり、ここでニーナがクザンに電話して、アラバスタに何用だ?と聞かれる事態は避けるべきなのだ。

それに……… ミス・オールサンデーの存在が気になる。クロコダイルと彼女が為そうとしている事は、もしかしたら、と。それを、この目で確かめたくもあった。


考えた結果、ニーナはクザンの番号ではなく、海軍が使う直近の支部へ向けての緊急信号を押した。

『こちら海軍G-12支部。そちらの所属と状況を』
「こちら、敵船拿捕許可状所有“王下七武海”特別枠、パスカル・ニーナです」
『っ!?え、あっ!特別枠海賊、ニーナ殿。……し、失礼ですが、M・C(マリンコード)をお願いします』
「マリンコード・000xx(スリーゼロ、ダブルエックス)」
『は、はっ!確認致しました!!それで、あの、緊急信号の意図を……』
「グランドラインで船が大破。イカダにて漂流中につき、そちらまで誘導願います。現在、グランドラインの“リトルガーデン”と海軍本部“マリージョア”との直線航路を進行中です」

そう相手の海兵に伝えながら、ゴソゴソとニーナはカバンを漁りマリンフォードを指すエターナルポースを取り出した。

『はっ!かしこまりました。こちらの支部へ誘導致します』

ビシリと敬礼まで見えそうな勢いで電伝虫が相手の真似をして表情を引き締めた。その様子に、ニーナはニッと口の端を釣り上げる。

この海域上にある島の海軍支部ならば、当然、世界政府加盟国であるアラバスタのエターナルポースも常備しているだろう。一つこっそり拝借しても問題はないはずだ。

自分の目撃情報が入ったら一々連絡しろとまでは、支部にも通達されてない筈なので、これならクザンや上の人間に知られなくて済む。
あとはさっさと支部まで辿り着かなければ。と、ニーナは能力を駆使しながら、今にも波でひっくりかえりそうになるイカダを進めた。
prev - 17/32 - next
back
しおりを挿む

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -