こ、これが。





「…よっしゃ!」

目覚ましを見てガッツポーズ。

「寝坊しなかったよぉぉ!」

落ち着いて準備をして、家を出た。

今日は練習試合だ。


「おはよーございます!」

集合場所へ着くと、なかなか早い方だった。
笠松先輩すらいない。

ぐふふ、ざまぁ。
私だってやれば出来るもんね!

「おーす」

「あっおはようございます!」

声に振り返るといたのは笠松先輩。

「名字今日は早いな」

「笠松先輩遅〜い!待ちくたびれましたよっ」

「調子乗んな」

ゴッ……!

殴られました。
暴力キャプテンめ。



「じゃあ行くか」

グッと表情を引き締め、相手校へ向かった。



試合が始まる前に、選手がコート内で軽くアップをする。

んん…?

なんか相手校の方々が、こっちのベンチを見てる…。
私、だよね?

え、なになに?
怖い。
にやにやしてるし!
もしかして鼻毛とか出てる!?
どうしよーっ!

慌てて後ろを向き、荷物を弄るフリをしてその場をごまかした。


しばらくすると、選手が戻ってきた。

「笠松先輩っ!私鼻毛出てます!?」

「はぁ?」

泣きそうな顔ですがりつく私。
先輩は心なしかどん引きしている。

「相手校の人たちが私を見てにやにやしてるんです!」

怖いよーっと怯える私。

笠松先輩はちらっと相手校のベンチを見た。

そして私の頭をガッと掴む。

「ひぃ!?」

「何も出てねぇ。いつものアホ面だ」

そう言って監督の元へ行ってしまった。
なんか不機嫌…?

「てかアホ面て…」

「名前先輩」

なぜかクスクス笑いながら現れた黄瀬くん。

「なに?」

「相手校の人たち、名前先輩のこと可愛いって言ってたんスよ」

「はい?」

黄瀬くんの話によると

A「海常のマネ可愛くね?」

B「思った〜」

A「オレ試合勝ったら声かけてみよ」

B「いいね!あの子に良いとこ見せようぜ〜」

こんなやりとりをしていたらしい…。

「マジか…」

「だから笠松先輩、あんなチャラチャラした奴らと試合すんのかって怒ってるんス」

黄瀬くんは苦笑いで言う。

予想もしなかった展開だけど、なんか複雑だよ。


「「「お願いします!」」」

選手たちの声で試合が始まる。
ピリッとした空気になった。


私はドリンクやタオルを準備したり、なかなか忙しい。

けど時々ちらりと試合を見ていた。

バンッ

「黄瀬!」

試合をしているとき、みんなはすごく格好良い。
スポーツっていいな。
そしてやっぱり目に着くのは…

「笠松先輩…」

我らがキャプテンだった。

真剣な表情で、ボールを追う。
汗にまみれたその姿は、輝いていた。


「やはり簡単には勝たせてはくれんか」

隣で監督が呟く。
今回の相手も、強豪校だった。


「お疲れさまです」

タイムアウトのとき、戻ってきた選手に色々と渡す。

「笠松先輩」

近付くと相変わらず厳しい顔をしている。
ちょっと怖いな…。

「あぁ」

私に見向きもせず、タオルを受け取る。

「先輩、なんか怖い」

「あ?」

しまった、声に出た!
私のばかー!
殴られるぅぅぅと頭を引っ込める。

「…悪ぃ」

「先輩…?」

「ちょっと焦ってた」

笠松先輩はバツの悪そうな顔で謝った。

「…どうかしたんですか?」

「絶対勝たなきゃいけないからさ…」

先輩はあんな奴らに勝たせてたまるかと、向こうを睨んだ。

「すごい執念ですね!」

さすが先輩!
いつも真剣だなぁ。

「…まぁな」

「頑張りましょー!」

私はグッと拳を作って先輩に笑いかける。

「おぅ!」

先輩も拳を作り、私のそれにぶつけた。

そして、

「行ってくる」

私の頭をクシャッと撫で、コートへ向かった。

「いっ…てらっしゃい…ませ」

急なことにまたドキッとした。



試合ももうすぐ終わりだ。

タイムアウトの後からは、海常はどんどん差を付けていった。

だけど私は笠松先輩が気になって仕方なかった。
苦しいくらいに動悸が激しい。

それから逃れるため、笠松先輩から目を離してみた。
すると目に付いたのは森山先輩。


「いや、最近名前が笠松をよく見てるからさ」


この間、森山先輩に言われたことを思い出す。


確かに見てるよ!
しかも、不整脈つきで!



「試合終了ー!」

その合図に我に返った。
それと同時に笠松先輩を見る。

「う、わ!」

笑顔だ…。
しかもとびきりの…。


ドクンドクン。


私の心臓は一層激しく脈打つ。

「あぁ……」



名字名前、自覚しました。

私、どうやら笠松先輩に…

恋してしまったみたいです。







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101026

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