ありがちな結果ですが。




そして、私たちは…。


「ありえねー」

「まじで決勝まできちゃったよこいつら」



とんとん拍子に勝ち上がり、もうすぐ女子バスケの決勝戦に挑むこととなりました。

いや、別に私が活躍したわけではないですけどね。

たまにボール奪うのに成功したとかそれくらいのことしかしてませんけどね。





「名前がいるからこっちのチーム3人で戦わされてるくらいのハンデだったのにね」

「ちょっと待って、私は戦力外と言うよりマイナスなの?」

「確かに、足引っ張ると思ってたわ」

「ひどくない?」



チームメイトたちの厳しい言葉を聞きながら体育館で待機している。

うちの学校は運動に力を入れているだけあって、各決勝戦は全員が見られるように一試合ずつ行う。

今は男子バレーの決勝。

うちのクラスは私たち以外すべての競技で敗退したので、応援にも熱が入らない。



残る試合は女子バスケと男子バスケのみ。

他の競技はすべて優勝が決まった。

ちなみに、男子サッカーではなんと笠松先輩のクラスが優勝してしまった。

もちろん見たよ。先輩格好良かったです。





ピー!

「あ、終わった」

いつの間にかバレーが終わっていた。

次はバスケの決勝戦になる。


今度は全校生徒の見守る中、決勝戦かぁ。

相手チームは3年生だしさすがの私たちも緊張している。




「名字ー!!頑張(れ)よー!!!」

「うるさい早川」



クラスメイトの応援を背に、整列して挨拶。

ちらとタイムキーパーの方を見ると、笠松先輩と小堀先輩、森山先輩がいた。


「あぁ、可愛い後輩を応援するべきか、クラスの女子を応援すべきか迷う…!」

「静かにしろ森山」

「名字ファイトー(小声)」


なにこの公開処刑。

冷や汗が止まらないのですが。

というか小堀先輩の小声応援が可愛すぎて泣ける。



審判はまた1年生。

信じられないものを見るような目で私を見つめるのやめて。



「「「お願いしまーす」」」










「名前!」

「うわわ!はい!」

回ってくるパスになんとか対応し、ゴールへ向かう。

すぐ奪われて凹む。


「カット!」

「うわできた!」

運よく相手のパスをカットできて自分で驚く。


そんななんとも私らしいバスケをしながら、休憩になる。

「やっぱり強いね」

「今のところ五分五分だ」

相手チームとの点差はあまり開かず、追いつき追いつかれを繰り返していた。





「名字」

「うわあ!笠松先輩!?」


突然後ろから声をかけられた。

いつの間に近寄ってきたんだ先輩。

ちょ、にやにやするのやめてマイフレンド!



「ドリブルのときもうちょい顔上げろ。ボールばっか見てるから取られんだよ」

「え」

「あと腰落とせ。いいな」

「あ、はい」

「小堀からはディフェンスのときはもっと左右動けってよ」

「分かりました」

「森山は…まぁいいや。試合に関係ねーことだし」

「はい」

「じゃ、最後もうちょっと頑張れよ」

「ありがとうございます…」


色々とアドバイスをしてさっさと戻ろうとする笠松先輩。

すると友達が声をかけた。


「笠松さん」

「…」

先輩はおそるおそる振り返る。

「名前運痴すぎてもう疲れてるみたいなんですよー分かります?」

「…あぁ」

「後半なんとか持つように、笠松さんも協力してくれません?」

「?」

「ちょっと、何言ってるの!?」

突然わけの分からない話をされ、私も笠松先輩も戸惑う。


「もし優勝できたら、ご褒美に名前を映画にでも連れて行ってあげてほしいんです」

「はあああああああ!?」

ちょ、何言って…!?

「なんか観たいのあるらしいんですけど、私もう観ちゃったんですよねー彼氏と」

さりげなく彼氏自慢しないでくれるかな。

「笠松さん映画嫌いですか?」

「違う」

「じゃあいいですよね!お願いします!モチベーションのために!」

「…あぁ」

え!?

先輩は絶句している私の方に向き直った。

「映画でもなんでも連れてってやるから、勝てよ」

それだけ言うと、今度こそさっさと戻っていってしまった。


「だーいせーいこーう!」

「あんた何勝手なことしてくれちゃってんのおおおおう!?」

「モチベーションだよ、モチベーション」

いやいやいや、確かに映画とか…行きたいけど!

先輩に迷惑かけちゃう…。

「これで疲れ取れたでしょ。後半頑張れるでしょ」

確かに見たい映画あるんだけど!

え?ちょっと待ってなに?勝ったら笠松先輩と映画行けるの?

笠松先輩と?















「おし、勝ちましょう」

「名前のやる気入りまーす!」

「「「ハイ喜んでー!」」」

「ちょ、聞いてたなお前ら!」


いつのまにかチームメイトたちもにやにや笑っていた。

そしてすぐ後半戦になってしまう。

あれ?作戦会議しないうちに休憩終わったよ?







「名字いいぞー!」

映画のこと考えたら、急に元気になった。

笠松先輩にあそこまで言ってもらって、負けるわけにはいかないし。


そんなこんなでいつのまにか、相手ゴールの下にいる私。

回ってくるパス。

見渡しても味方いない。

こ れ は !



「名字打て!!」


私がシュートする流れですね!?




相手チームにボールを奪われるのを阻止しながらなんとかゴールを見上げる。

ここの位置から、両足曲げて…。

笠松先輩との特訓で言われたことを思い出しながら、シュートを打つ。



選手もギャラリーも息を飲んでボールの行く先を見つめた。

落ちてきてもいい。また拾って投げてやる。


ボールは後ろのボードにぶつかると、リングの上に落ちる。

くるくる回りながら、ゆっくりと、リングをくぐった。



「うおおおおおお!!!入った!!!」

「ナイス名前ー!」


わっとギャラリーから声が聞こえ、我に返る。


「はいった…」


確かに特訓では入るようになったけど、実践で入ったのは初めてだった。

主にカットとディフェンスをしていたため、シュートはほぼ任せていたのだ。



「あれ学年1の運痴って聞いてたんだけど」

「うそでしょー」

相手チームの方々もびっくりして私を見ている。

私だってびっくりだ。




また試合に戻ったが、すぐにホイッスルが鳴った。


「終わった」


慌ててスコアボードを見る。


「え」

「勝ったよ!ぎりぎり勝った!!」

点数を確認していると、チームメイトたちが駆け寄ってきた。

私たちが勝っていた。

シュートのことで動揺していて気が付かなかったけど、いつの間にか追い越していた。




「優勝だあああああああ!!!」



早川の雄叫びを聞きながら挨拶をした。


そして


「シュート成功した…!」


パッと横を見ると嬉しそうにしている笠松先輩。


「笠松先輩!シュート!!入りました!!」

先輩と頑張った特訓を思い出し、思わず大きな声を出して駆け寄る。


「初めて入りました!絶対出来ないと思ったけど!出来ました!」

こみあげる喜びをうまく言葉にできないが、身体を大きく動かしながらなんとか伝える。




「おめでとう」




笠松先輩が笑って、褒めてくれた。

あんなに厳しい先輩が…。



「先輩、ありが…」




「うおおおお名字頑張ったなぁあああああ!」


突然身体の側面に受けた衝撃。

倒れそうになるのをなんとか踏ん張ってこらえた。


「名字やったな!優勝したぞ!」

「ちょっと早川くん空気読めなさすぎー」

「いやいやとりあえずハイタッチでしょまずは」

「胴上げにする?」

「放送席放送席ー本日のヒーロー名字さんでーす」


声のする方を見ると、いつの間にかクラスメイトが集まっていた。

バシバシと色々な子(主に女子)から頭を叩かれ、健闘をたたえられた。

なんでも、私の入れたシュートが大きな決定打になったらしい。

見くびってごめんとか色々言われた。










表彰式が終わり、ホームルームも終わった。


「打ち上げしようよー」

「「部活あ(る)」」

「滅びろバスケ部」


いくら球技大会の後とは言え、部活は休みにならなかった。

残念だけど私と早川は部活に行き、もし間に合うなら後から参加することになった。







「お疲れ様でーす」

「名前先輩お疲れさまっスー!!今日のヒーロー!!」

体育館に入ると黄瀬くんがぴょんと飛びついてきた。

体力あるのね。



「特訓してよかったな」

「痛!?」


背中をバシッと叩かれて振り向くと笠松先輩がいた。

先輩も疲れてないんですねさすがです。





「笠松せんぱーい、今日くらい部活休みにしてほしいっスー」

「何甘えてんだ!そんなに飛び跳ねる元気があるなら部活やれるだろ!」

「痛いっスー!だってクラスのみんなは打ち上げ行っちゃったんスよ。オレだって行きたいっス」

「打ち上げぇ?」



黄瀬くんが休みたがったのは打ち上げが理由か。

どこのクラスもやってるってことだろうな。

心なしか他の部員もそわそわしている。




「うちのクラスも打ち上げやってます!今日のヒーローの名字が来ないって怒ら(れ)たっす」

早川が残念そうに笠松先輩に話している。

「打ち上げ=女の子と話せる=仲良くなれる=一大イベントなのになぁ」

体育館の隅で膝を抱えている森山先輩は見なかったことにしよう。

「まぁバスケ部は仕方ないさ。部活も頑張ろう」

小堀先輩ポジティブ!さすが!





そうこうしている内に監督がやってきた。

名字良かったぞと褒めてから、笠松先輩といつも通りのミーティング。








「今日は、1時間で終わらせる」

「「「え…?」」」





笠松先輩がみんなの前に立ち、いきなりそう言い放った。

ど、どういうこと?



「疲れているだろうし、無茶するのはよくないってことになった。1時間やったら、後は自由だ」


「「「や、やったぁーー!!!」」」


わー疲れてたし助かるー。

私もにやけそうになる顔を抑えて、道具の準備をした。






「名字打ち上げ行くだ(ろ)?」

「あ、うん」

あっという間に1時間が経ち、部員たちは急いで着替えに向かった。

早川に声をかけられ、私も急いで着替えに行くことにする。

更衣室からはシューシューと制汗剤の音がいつもより大きく聞こえていた。






「お待たせ早川」

「おう」


「あれー名前たちもこれから打ち上げ?」

「お疲れ様です森山先輩」

「先輩も打ち上げすか?」

「もちろんだ!こんなチャンスを逃すかよ」


ちょうど校門で森山先輩と鉢合わせた。


「笠松先輩は…?」

姿が見えないので問う。


「あいつ居残りしようとしてたからさー。小堀が説得してこれから来るんだ」

さすがバスケバカ…。

「本当は女子がいるから行きたくないだけだぜ。でもせっかく優勝したんだし行かなきゃもったいないだろ」


人生損してるよなと森山先輩が熱く語っていると、小堀先輩に連れられて笠松先輩がとぼとぼと歩いてきた。




「笠松先輩!打ち上げ楽しんできてください!」

早川が拳を握り締めながらそう言うと、笠松先輩も小さく頷いた。



途中まで先輩たちと同じ方向なので一緒に向かう。

森山先輩がクラスの可愛い女子について熱く語っている。

あ、そういえば笠松先輩のクラスって海常のアイドルがいるじゃん。


うわーなんか心配だな。

笠松先輩大丈夫かな。




「笠松先輩、打ち上げって女の人いますけど…」

「あぁ」

「大丈夫ですか?」

「…仕方ねぇだろ」


うん、だいぶ憂鬱みたいだね。

でも笠松先輩と打ち上げとかいいなぁ。

こういうとき同じクラスの人うらやましい。



「そういえば」

笠松先輩の声がしたので、そちらを見上げた。


「映画、どうする?」











「そ、そういえば…」




忘れてたー!!

優勝したら、先輩と映画だったー!!






「いつにする?」

「え?」

「え?ってなんだよ。行くんだろ?」




先輩はなかったことにせず、ちゃんと計画を立てようとしてくれていた。

なんだかそれがすごく嬉しくて、胸がきゅっとなる。



「わ、私オフの日ならいつでも空いてます!あ、休みの日は休みたいですよね!?それだったら部活午前だけの日でも大丈夫ですけど!!」

慌てて自分のスケジュールを説明した。

本当に行けるなんて!



「せっかくなんだから部活ない日にゆっくり見に行った方がいいだろ。次の休みいつだっけ」


優しい…。

わざわざ休みの日に私と会ってくれるんだ…。

ありがとう笠松先輩。

ありがとうマイフレンド!!



運の良いことに、来週の土曜日は部活が休みだった。

また時間はメールすると言われ、それぞれの打ち上げ会場へと別れた。




先輩と…映画。

これ、デートって言ってもいいのかな?

映画デート…。

うわー緊張する!!!





もちろん打ち上げでは先輩について色々と聞かれましたよ。

もう女子ほとんどにばれたんじゃないかなこれ。








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130823


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