バスケしかしてないです。




土曜日。

今日はディフェンスの練習をするらしい。

授業がないから部活も一日だったのに、こんな日でも練習につきあってくれる部員たち優しすぎ。





「ディフェンスは小堀だよな」

「おう、任せろ」

「オナシャス!」



ディフェンスのプロ、小堀先輩の指導を受ける。


「相手の動きをよく見て、そう、手と足としっかり」


優しくて常識人の先輩、分かりやすく教えてくれる。

ドリブルの練習のときの早川ときたら、何言ってるかさっぱりだった。

海常の癒しコボリン最高!



「コボリン?」

「うわわわわわなんでもないです!!」


危ないまた声に出てた!




森山先輩のシュートを抑える。

動きが2人とも速すぎて見えませんがな。

でもなんとなくだけど、分かる。

いつもはマネージャー目線で見ているけど、今は自分がプレイする目線。

こんなにすごい動きをしていたんだな。






「ディフェンスは数こなしてなんぼだし、ちょっとやってみようか」

「は、はい!」


「相手誰にしよう」

「男女じゃ身長差あるからなー」


先ほどの2人が相談している。


「ま、レギュラーの中でも一番背が低い笠松が妥当だな」

「そうだな、手の抜き方は誰でも同じにできるし」



え、笠松先輩からゴール守るの?

無理すぎて震えるんだけど。



「よし、覚悟はいいな名字」

全然よくないです。

とっても悪人面してますけど先輩。





「名字、さっき教えたみたいにすればいいからな」

「よく見ろよー」


レギュラー陣がコートから出た。

コート内には私と笠松先輩のみだ。


笠松先輩がボールを持ち、こっちを睨んでいる。

怖い、怖すぎる。食われる。



「行くぞ!」

キュッと音がして、笠松先輩が動き始めた。



「わわ!」

慌ててその動きに合わせて私も身体を動かす。


あっという間にゴール下だ。

なんとかして止めなきゃ!

シュートの姿勢に入ろうとする先輩に手を伸ばす。



が、難なくかわされボールはあっという間にリングに収まった。



「よく見ろって言っただろ」

「はいぃ」

先輩は本気の半分、いや三分の一も出していないだろうけど、軽くかわされてしまった。




「名字、笠松の動きを読むんだよ」

「ちゃんと身体動かしてな」

「ファイトっス!」



応援を受けて、気合を入れなおす。


「もう一回お願いします!」

「よし」



また笠松先輩がボールを持ち、ゴールを狙う。

シュートをした瞬間、ジャンプしてボールに触ろうとしたが、タイミングが遅かったのか届かなかった。


「惜しい!」

「そんな感じだ名前!」



「もう一回!」



シュートを打つ前に止めようともしたけど、やっぱり間に合わない。

私は人一倍身体の動きが遅いから、シュートを打つ直前にジャンプして、手から離れたボールを叩き落す戦法にしよう。




「もう一回お願いします」


何度も先輩のシュートを見て、ジャンプして、失敗。

先輩は手加減してくれてるけど、シュートのタイミングはいつもばらばらだ。

見極めるのが難しい。

早くに跳びすぎると、フェイントをつかれてしまうし。





「はぁ、はぁ」

「大丈夫か」

「は、い」


日頃の運動不足の成果か、息が上がる。

比べて先輩は全く息が乱れていない。

ま、当然だけどねー。




「そろそろ取れよ」

「はい!お願いします!」


もう何度目か分からない、何分いや何時間経ったか分からないけど、笠松先輩がボールを持って動き出す。

よく見ろ、うつか、まだか。


「今!」


ピクリと先輩の肩の筋肉が動いたのを見た。

同時に私はジャンプする。

するとちょうどボールが打ち上げられており、手を伸ばした指先にほんの少し掠った。




「「「触った!!!」」」




指に触れた感覚があるかないかくらいだったけど、全力で跳んだ甲斐があってボールの軌道が逸れた。


「やった!」


と思ったのもつかの間。


ジャンプすることとボールに触ることに集中しすぎて、着地のことを忘れていた。





「あぶね!」




どん




鈍い音はしたけど、痛くない。


衝撃に耐えようと閉じていた目を開く。



「か、笠松先輩!」


目の前には笠松先輩の顔があって、先輩が下敷きになっていることに気付いた。

おそらく落下した私を受け止めて、そのまま二人ともひっくり返ったのだろう。



「ご!ごめんなさい!大丈夫ですか!?」

「全然問題はねぇ」



コート外にいた人たちも集まってくる。



先輩はどこも打っていないようだ。

ホッと息を吐く。




「それにしても、うらやましいな笠松」

「は?」

「女子をそんな風に抱きしめられるとは」

「「え」」




森山先輩の言葉で自分たちの状況を確認した。


私は笠松先輩の上に乗っていて、先輩の両腕は私の背中に回されている。






「笠松ナイスキャッチだったなぁー。名字が落ちてくるところちゃんと狙ってギュッと抱きしめてさ」

「「!!!!!!」」


小堀先輩の天然爆弾で、私たちは即離れた。

森山先輩も隣でくすくすと嫌な笑みを浮かべている。



抱きしめられちゃった、笠松先輩に。

いや、事故なんだけどさ。

背中に感じた先輩の腕の感覚が忘れられそうにない。

あと、先輩の匂いも間近でかいでしまった。

ドキドキが収まらない。

あぁ、特訓してもらってるのにこの下心というか不謹慎というか。

顔が熱いよー…。





そんな乙女モードも一瞬だった。


「お、思ったよりこいつが重いから!」

「えっひどい!」

突然笠松先輩が私を指差しながらひどいことを言う。

ダイエットします…。







少し休憩してからまたディフェンスの練習をした。

うーん、難しい。




何度も笠松先輩にぶつかったり、転びかけたり。

そのたびに身体を張って助けてくれる先輩。

格好良くて優しくて、色々な気持ちが弾けそうになった。

好きですって言っちゃいそうになる。

もちろん、理性が止めるんだけど。








「ディフェンスできるようになったら、シュート練習な」

「まぁ女子のバスケだし、経験者いないならある程度出来れば大丈夫だろ」

「そうだな、球技大会までになんとか間に合わそう」

「おう」



レギュラーのみなさまが私のために練習プランを話し合っている。

片付けをしながら心地好い疲労感を感じ、スポーツっていいかもなんて思っていた。


ただ、笠松先輩の感触と匂いを思い出すたびに発狂しそうになるのが厄介すぎて。

今日眠れるのかな…。











★★★★★★★★★★★★★★★★★
バスケのルールは分かりません。

130701

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