会いたかったーいえす! 「…で」 笠松先輩が口火を切る。 「何を買いに行くんだ?」 「アクセサリーです」 「げっ…」 あからさまに嫌そうな顔。 苦手そうだもんな。 ま、だから面白いんだけど。 (私ってS?) 「部活で使うシュシュが欲しいんですよー」 「シュシュ?」 「ほら、あの、頭に付けるやつ」 「あぁ、AKBのやつか」 「…………」 間違ってはいないけど…。 シュシュ知らないのにAKB知ってるの? なにこの人。 「でお前はAKBになりたいのか?」 「いやいや!シュシュはAKBだけの物じゃないですよ!」 最近女の子みんなしてるじゃん! 私だって部活中してるよ! 「いちいち女子の頭なんか見てねぇ」 …ですよねー。 イメージ通りのキャラだ。 「まぁAKBになれるならなりたいですけどね」 あ〇ちゃん可愛いし。 ま〇こ様も好きだけど。 「みんな同じ顔に見える」 「ちょ!あなた今全国のファンを敵に回しましたよ!」 「知らねーよ…」 先輩の肩をゆさゆさすると、先輩はドン引きしていた。 「可愛くてスタイルもいいなんて、女の子の憧れですよ」 「お前の方がネタな感じではあるから大丈夫だ」 何が大丈夫なんだろう。 私お笑いになるつもりはないんだけどな…。 なんか今日の先輩はボケだ。 いつもと逆。 「先輩、今日いつもと違う…」 「そうか?」 「なんかいつもよりグダグダですよ」 「あー…休日だからな」 「は?」 「気ィ張らなくて済むだろ」 …なるほど。 いつも主将として頑張ってるもんなー。 偉いなぁ…。 格好良いなぁ。 (人間がね) 「あ、ここ見ます」 「…おう」 一瞬先輩がゴクリと喉を鳴らした。 なにその覚悟。 「どれにしよー」 「早く決めろよ」 腕を組みつまらなさそうな顔をする先輩。 早く決めたいけど…! 迷うっ。 うんうん言いながら眺めると、先輩は値札を見た。 「ただの布の割には結構するんだな」 「…可愛いですから」 「まだ悩んでるのか」 「だってー!」 私の手にあるのは、白のふわふわした物と、黒地に小花柄の物。 どっちもすごく可愛い。 選べない…! 「2つ買えばいいだろ」 「さっき服に使ってお金ないです」 そう、1つが限界だ。 「じゃあ安い方」 「同じ値段です…」 「…………」 「先輩選んでくださいぃぃぃ」 「はぁ?」 「決めらんない!」 「俺には分からん」 「直感で私に似合う方を!」 ずいっと2つのシュシュを差し出す。 先輩はじーっと見比べ… 「…じゃあ、こっち?」 指差したのは白。 「あぁ〜…白かぁ」 「なんだよ」 「でも黒もなぁ〜…」 「じゃあ黒にしろ」 「でも白もいいんだよなぁ〜…」 「うぜぇー!!!」 先輩の顔つきが酷くなる。 女の子って選んでもらっても、決定出来ないんだよね。 習性かな。 「うーん…」 「まだかよ」 「うむー」 「さっき俺に選ばせたのは何だったんだ」 「ふぬーっ」 「…………」 2つを持って唸る私。 なんでこんなに可愛い物たちに出会ったんだろ。 「どうし…」「だあ!」「ひぃっ?」 すると先輩が吠えた。 「埒があかねぇ!」 そう言うと、白のシュシュを私から奪い取った。 そしてずんずんとレジへ行く。 「え?」 お金を払い、シュシュの入った袋を持って戻ってきた。 「んっ!」 ずいっと袋を私に差し出す。 「え、え?」 戸惑う私の手に、袋を持たせた。 「これは買ってやる」 「は?」 「さっさとそれ買ってこいっ」 そう言って、店を出た。 「せんぱ…」 我に返り、慌てて先輩の方を見ると、怖い表情。 「早くしろっ」 「はい!」 急いでレジへ行き、黒のシュシュのお金を払い、店を出た。 「先輩、あの…これ」 おどおどしながら袋を見せる。 「悩んでたら日が暮れる」 「でも…悪いです」 「待たされる方が迷惑だ」 「…すみません」 そうだよね。 先輩の横を歩きながら落ち込む私。 罪悪感で胸がちくちくする。 どうしよう…。 泣きたい。 「そのかわり…」 先輩が立ち止まった。 そして私の持つCDショップの袋を奪う。 「これ、先に聞かせろよ」 そう言ってニッと少し意地悪な顔で笑う。 「…はいっ」 そんな先輩の顔を見て、胸がきゅんとした。 優しすぎる。 甘すぎるよ先輩。 涙が出そう。 なんだかますます、好きになってしまった。 「今日はありがとうございました!」 日が沈み始めた頃。 結局先輩は家まで送ってくれた。 「おう」 「明日、白いシュシュ付けますね!」 「…勝手にしろ」 「先輩、これの方が似合うって言ってましたよね?」 にやにやしながら尋ねる。 「マ、マシなだけだ!」 先輩は恥ずかしそうに怒鳴った。 「え〜そうなんですか〜嬉しかったのに〜」 ブーブーと文句をたらすと、 「名字は、白が似合う」 「ふぇっ?」 「じゃーな!」 すぐ後ろを向き、走り去ってしまった。 「………」 残された私の顔は真っ赤。 すぐ家に入り、ベッドに飛び込む。 「ああぁぁあぁー!」 先輩、ずるい! 明日から白の物、持ちにくいじゃん。 「これはもう…」 認めるしかない。 笠松先輩のことが大好きだ。 本当に本当に大好きになってしまった。 そんな休日。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 110124 ←*→ |