5万打リクエスト2




「おいどけブス」

「はぁー!?なんだその言い方はガン黒野郎」

「誰がガン黒だコラ」

「てめー以外に誰がいるんじゃボケ」



「ほらほら2人とも、喧嘩しないの」



「さっちゃんー私は悪くないんだよ。最初に絡んできたのはこいつなんだからー」

「ぶりっこすんな気持ち悪い」

「あん?」

「もーダメだってば2人とも!」






青峰大輝と名字名前は、大変仲が悪い。

中学からの付き合いであり、さつきと友達になった名前と青峰が知り合うのもすぐで、あっというまに打ち解けた。

はずだった。



「2人とも、気が合うのかなぁ」

「いや、気が合わないんじゃないかな」

「でも喧嘩するほど仲がいいって…」

「私とあのアホは違う!」



打ち解けすぎたのだ。

お互いにオープンな性格のため、気遣い合うことをせずにずけずけと言いたいことを言い合った結果、このような関係になった。

さらになぜか同じ高校に進学したため、毎日喧嘩してはさつきが間に入って宥めるという結果になる。



「でも名前ちゃんと喧嘩してる青峰くん、なんだか楽しそう」

「え、そう?」

「部活やってるときよりも生き生きしてるもん」

さつきが笑顔でそう言うものだから、名前もつい顔が緩んだ。






「楽しそう…だって…ふぅーん」

さきほどさつきに言われた言葉が頭の中でこだまする。

実は名前も、青峰と喧嘩する毎日が嫌いではない。

むしろ、楽しみでもあった。

ひそかに中学の頃から青峰に想いを寄せていた名前は、素直に態度に出すことが出来なかった。

喧嘩をするしか、彼とコミュニケーションをとるきっかけが掴めていない。

このままでは良くないと思いつつも、照れてしまって結局は喧嘩腰になってしまう毎日であった。








「青峰くん!また部活サボってこんなところにいる!」

「あーうるせぇなー今いいところなんだよ」

「何見てるの?」

青峰は屋上にいた。

それはいつものことなのだが、いつもなら寝そべって雑誌を読んでいたり眠っていたりする彼が、珍しくフェンスの外を覗いていた。

さつきも気になって隣に並び、青峰の視線を追った。


「あれ名前ちゃん?」

「そう」

「何してるんだろう?」


名前とは放課後、ばいばいと別れたばかりだ。

もう帰ったと思っていた彼女があんな人目のつかない裏庭で何をしているのか。

そう思ってさつきがよく見てみると、傍には男子生徒がいた。


「あれ?これってもしかして…」

「告白じゃねーの?」

「やっぱり!名前ちゃんいつのまに!!」

「あいつ地味にモテるんだよな。ブスのくせに」

興奮するさつきとは対照的に、青峰はつまらなさそうな表情だ。

「明るくて誰とでも仲良く出来るもんね。あ、青峰くんは別だけど」

「うるせーな」

「どうするんだろ、付き合うのかなぁ?」

「しらねーよ!明日本人に聞け」

「青峰くん、なんでそんなに怒ってるの?」

「は?怒ってねーよ!!」

怒ってるじゃん…とさつきは心の中でため息をつく。

これはもう部活に来ることはないな…と。







告白された名前は、丁重にお断りしていた。

見込みがないと分かっていても、青峰への恋心を捨てて他の人と付き合うことなんて出来ない。

自分の不器用さに情けなくなりながら、帰宅するのだった。





「おはよー名前ちゃん!」

「おっすブス」

「おはよーさっちゃん!」

「おい無視すんなよ」

「あれ、いたの?黒すぎて見えなかった」

「ふざけんな!」


朝からすぐ喧嘩を始める2人。

さつきは止めるのも面倒に思い、即本題を切り出した。


「ねぇねぇ!名前ちゃん昨日告白されてたよね?どうなったの?」

「え、えぇ!?なんで知ってるの!?」

「青峰くんと屋上から見てたんだ!」

「え、青峰も!?」

「おー、よかったなブス」

頬を少し染めながら慌てる名前を見て、青峰は心の中を黒い何かが蠢くのを感じた。


「またそんな言い方して…」

さつきがため息をつく間もなく、青峰は続ける。

「もう告白されるのなんて人生でないかもしれないぞ。ちゃんとOKしたんだろうな?」

「し、してないけど…」


少し戸惑いながら返事をする名前に、内心安堵していた青峰。

しかし心とは裏腹の言葉が口から零れた。


「ハッ、もったいねー。こんなチャンス逃して、もうお前一生彼氏できねーぞ」





「は?」




「ちょ、青峰くん言いすぎ…」

さつきに指摘されずとも分かっていた。

そんなことを言いたいなんて思ってもいない。



告白されて頬を染める名前に…

断ったと聞いて安心してしまった自分に…

なぜだかイライラして、つい言ってしまった言葉だ。



しかしそんな青峰の事情など知らない2人。




パン





次に青峰が我に返ったのは、ジンジンと痛む頬と、

去っていく名前の後姿に気付いたときだった。




「青峰くんのばか…」

さつきの悲しそうな声が頭の中で木霊する。

彼女は名前を追って走って行ってしまった。

授業になど出る気になれない。

しかしなぜだか帰る気にはなれず、いつもの場所へ向かっていた。






「っ名前ちゃん…」

「さっちゃん…」


一方名前は裏庭に走ってきていた。

そしてすぐ追いついてきたさつきと、花壇のそばに座る。


青峰を打った掌が熱を持っていた。


「ごめんね、青峰くんデリカシーなくて」

「さっちゃんが謝ることないよ」

「でも…」


名前はため息をついた。

「さっちゃんには言っちゃうけど…」

「うん?」

「私、青峰のこと実は好きだったんだ」

「…そうだったんだ」

さつきは今までの名前の言動や行動を思い出しながら、密かに納得していた。

愛情の裏返しだったのか。

でも、じゃあ青峰はどうなのだろう…。

もし2人が同じような性格だったら。

そんなことを色々と考えていると、また名前が話し始めた。


「でも、あんなこと言われちゃった」

「そ、それは…」

「脈なしすぎるよね。しかも叩いちゃったし」

「…」


ついに涙が零れた。

「名前ちゃんっ…」

「あ、ごめんどうしたんだろー…」

慌ててセーターの袖で涙を拭う。

「…青峰くんに言わないの?」

「言えないよ」

「でも…」







「何泣いてんだよあいつ」

そんな2人を青峰は屋上から見ていた。

屋上についてから、ふと昨日名前が告白されていた裏庭を覗き込んだ。

するとそこには彼女とさつきがいて、どうやら名前は泣いているようだった。

何を話しているのかは聞こえない。

しかし、自分を叩いた名前が泣いている。

彼女のそんな姿見たことがなかった。

「あー…クソ」





予鈴が鳴った。

名前は付き添ってくれるさつきのことを気にする。

「さっちゃん、授業始まっちゃうから…」

「名前ちゃん置いてはいけないよ」




「オレがいるから、お前はさっさと行け」




「えっ」

「青峰くん!」



突然現れた青峰に2人の肩が跳ねる。

「いいからさっさと教室行けよ」

「い、意地悪しちゃだめだからね!」

「ガキかオレは」







さつきが去って残された2人。

青峰はそれから何も言わず立ち尽くしている。

名前は俯いたまま口を開いた。

「…叩いてごめん」

「別に痛くもねぇよ」

「あのね…」

話し出そうとする彼女の声を遮り、青峰は一歩近づく。


「なんで泣いてたんだ?」

「えっと…」

「オレのせいか?」

「青峰のせいってわけじゃなくて…」



「なんか、お前が泣いてると調子狂うな」

「え?」

「いつも笑っているか、怒ってるかだから」


青峰はそう言うと、名前の肩を掴んだ。


「顔上げろ」

「でも、」


俯いたままの名前は、顔を上げることを渋る。

青峰は埒が明かないとばかりに、彼女の顎に手を添えた。

そのままグイッと顔を持ち上げる。



「泣くなよ」


涙の跡の残る顔に、青峰は胸が締め付けられた。



「ひどいこと言って悪かった」

「ううん」

「本当はあんなこと思ってねぇから」

「…」


青峰はまた目を潤ます名前に耐え切れなくなった。

そのまま彼女を抱きしめる。


「えっちょ!青峰!?」

「お前に泣かれると、なんだか分からねぇけどすごく苦しい」


だから、泣くなと抱きしめる力を強くした。



「優しい青峰って変」

「うるせーな」

「だけど、嬉しい」

「は?」


名前もおずおずと両手を青峰の背中に回す。

お互いの心臓の音が聞こえ合っていた。



「…好き」



名前の口から零れるようにして出てきた言葉。

青峰の身体が一瞬固くなるのを感じた。



「中学の頃からずっと好き。青峰がそんな風に思ってないって知ってたけど、抑えられなくて…ごめん」


「何言ってんだよ」

「え?」

少し早口で話した名前だったが、青峰の言葉に腕を解き、顔を上げた。



「オレは好きでもない女を抱きしめるようなチャラ男じゃねーよ」




「…え」




「分かったかバカ」


「えと、そ、それって」




「好きだよ、オレも」




耳を紅く染めながら、自分の気持ちを伝えた。

照れている表情が見られないよう、また名前を抱きしめる。




「嘘みたい」

「ほっぺた引っ張ってやろうか」

「夢だったらどうしよう」

「夢じゃねぇよ」




「嬉しい」

「…オレも」















数ヵ月後の放課後。

「名前、帰るぞ」

「今日部活あるってさっちゃんが言ってたよ」

「サボる」

「ダメ」

「うるせー」

「行きなさい」

「一緒に帰れねぇだろうが」

プイッと顔を背ける青峰。

名前は小さく微笑んだ。


「…終わるまで待ってるから、一緒に帰ろう」

「…分かった」

青峰は頬を掻くと素直に頷き、教室を出て行く。

大きなその背中に、名前は胸が温かいような気分になった。




「名前ちゃんのおかげで、青峰くん部活来る回数増えたよ!」

「それは良かった」

「やっぱり愛の力ってすごいんだね!」

「あ、愛って!!」

「何騒いでんだよ」

「大輝!」

「青峰くんと名前ちゃんの愛についてっ」

「はぁ?」

「さっちゃん!こんなガン黒オバケに愛なんて言葉分からないから」

「オイ名前てめぇ…」

「もー2人とも照れちゃってー」


「「照れてない!!!」」
















★★★★★★★★★★★★★★★★
5万打感謝祭 ゆーじろー様リクエスト
青峰 甘夢です!

両片思いと言うことでしたが
こんな感じで良かったのでしょうか…。
しかも甘くない…。
青峰相手だと、気の強い女の子しか思い浮かびませんでした。
精進します><

ゆーじろー様に限りお持ち帰り可です!
リクエストありがとうございました♪


[ 5/11 ]

[*prev] [next#]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -