「蒼、こっちを向け」 そう言われても首を横に振るしか出来ない。あんなことを言われた矢先に平門の目を見てしまったらきっと、流れるままだ。 先に戻る、そう言うより先に体が動いていた。逃げたい気持ちもあるし頭の中を整理したい気持ちもある、だけど一番は平門と二人きりになっているこの空間から早く立ち退きたいと思ったから。だけど今の平門はやっぱりそうはさせてくれない。 『ぅわっ…!』 「悪いが今日は逃がす気は無い」 『何言って…』 「俺がこんなことを言うとただの煩悩だと思われるかもしれないが」 背後からうまく抱きくるめられて首筋のあたりがこそばゆい。多分笑ってる声音だけどふと耳のあたりに柔らかいものが当たったことで嫌な予感がした。またあのトーンで何か言うつもりだなんて百も承知、だから気をしっかりもつよう瞬間的に身構えた。 「身構えたな」 『…だから何が言いたいの』 未だにこんな調子で余裕そうに見えるからちょっとイライラしてきた矢先だった。ふと顎を掴まれて平門の目に自分が映る妙な感覚。 「蒼、お前が欲しい」 『…!』 「正直余裕がない」 『―っ!』 そう言うより先に耳の裏にキスされた。そのまま項に吸い付かれて息を飲む私の身の強張らせ方に気付いてるはず、でも肩に手を回す手も愛撫に変わって言った通り余裕が感じられない。 『…っ、んっ!ぁっ…い、ま…ぁ、んんっ…!』 小さな鋭い痛みは確実に付けられたと思った。今までそんなことなかったせいか思わず声をあげるけど目が合うより先に口を覆われた。 すかさず舌も割り入れられてこんなに一方的なされ方は初めてだった。 感じてるなんて思わない、だけど腰の奥が疼いてそうも言ってられない。 『―っ!あっ、や…ひら…っ、ぁあんっ―』! 太腿の裏をなぞられた瞬間察するも間に合わなかった。ずらされた場所に躊躇いなく指をねじ込まれて少し動かされるだけで過敏に反応してしまった。 散々荒らされて抜かれる現場を目にしたものはドロドロに糸を引いた自分の愛液を纏った平門の指…咄嗟に目を伏せるも死ぬ程恥ずかしくなった。 「向こうで随分弄ばれたようだな」 『っ!』 「なら余計…加減ができないな」 意味深な笑い方と声音に冷や汗が流れる気がした。覆い被さる平門に身が強張るけど、平門は鼻先で軽く笑うだけだ。 『―っ!や、ひら…っ、まっ…んんっ―!』 「蒼、掴まれ」 『え…、』 掴まれと言う平門は私の腕を自分の首に回させて太股を押さえつけるように腕を回してきた。こんなに密着されたら本当に逃げられ… 「まだイクんじゃないぞ」 『は…?!…っ、んっ、やっ、ちょっ…!んぁっ、あっ…ま、だ…っ!』 「…イったら…もっとイジメてやる」 『何、言って…っ、やっ…あっあっ、イ…っ、』 イクなと言われてもイクように仕向けられて呆気なくイカされた。でも平門はまだ足りないとでも言うように止めてはくれるはずがなくこの絶倫ぐらいは言ってやりたいのにそんな余裕さえ与えちゃくれない。 「本当にお前は可愛いな」 『…なら…早く抜いてよ』 「それはできないな」 首元で肩を揺らしながら笑う平門、だけどふと顔を上げたと思えばそっと私の胸、痣をなぞるような手つきに体が捩れた。 『な、に…?』 「俺はお前を守る義務があると思っていた」 『え?』 「それは仲間として…そのはずだった。責任義務だったのかもしれない。だが今は違う…只々…」 (…!) そんなことを言われた私に何を求めているのか分からない。でも今まで生きてきた中で一番胸が苦しくなる言葉。 「お前を愛おしく思う」 耳元で、他に誰が居るわけじゃないのに私にだけ聞こえるようなトーンにゾクっとした。 平門の声は、本当にズルい。 Psychedelic |