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俺たちが到着してからだいぶ経った。エレベーターの扉はそれなりの間隔で開いては人を吐き出す。この会場内の人口は百人近く増えたのではないだろうか。
あの後、トンマ?とかいう名のおっさんを散々弄ってやった(刑部が)。
刑部に弄られげっそりとしていたはずのおっさんは、今は降りて来たばかりの四人組に絡んでいる。…暇人め。
「トンパさんこのジュース古くなってるよ!!味がヘン!」
そんな少年の声が聞こえてきた。
むさ苦しい男ばかりかと思ったらあんな子供も試験を受けるんだな…。
「ヒヒ…無味の物を選ばぬから見破られるのよ」
「…お前なぁ」
肩を揺らして笑う刑部。コイツの笑いどころが分からん。
おっさんはどうやらまた下剤入りジュースを配ったようだ。あの少年も怪しい男から飲食物を貰うなと親から教わらなかったのだろう。
少年に平謝りするおっさん。青年二人は中身を床に零したようだ。そして水色の髪の女が、
「…うげ」
「腕力ゴリラだな」
おっさんを殴り飛ばした。見事に宙を舞うおっさん。デ…ごほん…人よりもふくよかな体型のおっさんをあんな細腕で飛ばすとは人は見掛けによらないという事か。あ、まあ…マチも華奢な見た目で俺より腕相撲強いしなぁ…そうかこの世界では普通の事なんだな。
「リィアすごいね!」
「えへへ!ボクいーーっぱい鍛えたからね☆」
何だあの砂吐きそうな甘ったるい声は…!あ、別に盗み聞きしてるワケじゃない…ヤツらの声がデカいんだ。
それにしても…あの黒髪ツンツンの少年…どっかで見た事ある気がするんだよな。
「…あ、」
「如何した」
「いや、あれって確か主人公…だよな?」
刑部は一瞬首を傾げたがすぐに合点がいったのだろう、
「あー、確かそうよ、ソウ………ふーん…あれならキルの方が強いね」
一人うんうんと頷き納得していた。…おい、口調戻ってるぞ。
それにしても、このブラコ「我は事実を言うたまでよ」
「心を読むな」
「…ヒヒヒ」
笑ってかわされた。
果たして刑部が本当に読心術が使えるのか、それとも俺の考えている事が分かりやすいのか…。考えても埒が明かないので俺は刑部からそっと視線を逸らす。
そしてきゃっきゃと騒いで周囲の注目を集めている彼奴らを何となくもう一度視界に収めてみた。何故だかどうにも違和感が。
浮いていると言えば四人とも浮いている。
こんな所に少年というのも、物怖じせず妙に笑顔な女が居るのも、見るからに線の細い青年も、俺のように場違いなスーツ姿の青年すらも。
何かがおかしい、何がおかしい?
「なあ……主人公組の中に女って居たか?」
「サテ…我の記憶の中には無い」
「「あれ?」」
何だか面倒な事が起こる予感がする…かもしれない、気がする。
ちなみに俺の勘は…あまり当たらない。

ジリリリィイン、と耳障りなベルの音が響き渡った。

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