14

「あー…ノーロープバンジーってコレかぁ……」
謎はすべて解けた…ってヤツだな。
飛び降り自殺モドキが試験になろうとは驚きだ。


結局二次試験はやり直しになった。
不合格者が暴れたり、試験官(女)がキレたり、試験官(男)が頭を抱えたりした時、登場したのはハンター協会の飛行船。
飛行船からジジイが飛び降りて試験官(女)を説得、
「ふむ…審査を続行しようにも選んだメニューの難易度が少々高かったようじゃな。よし!ではこうしよう。審査員は続行してもらう。そのかわり、新しいテストには審査員の君にも実演と言う形で参加してもらう――と言うので如何かな?」
見事言いくるめた。さすが亀の甲より年の功。
それにしてもあんな高いところから飛び降りたってのにぴんしゃんしてやがるとはやたらに足の丈夫なジジイだ。素直に賞賛の念を送るとしよう。


さて、飛行船に乗せられてやって来たのは崖の上。底がまったく見えない谷間に少しばかり肝が冷える。
谷の間に張り巡らされた糸からクモワシの卵をとってくるというのが再試験だそうだ。
こんなのを待っていた、と言わんばかりに受験生らが続々と飛び降りる様は集団自殺にしか見えない。
その様子を遣る瀬ない気持ちで眺めていたら、
「アンタたちはー…どうする?受けなくても合格でいいわよ?」
ミンチ試験官(ジジイがさっきそう呼んでいた…と思う)が尋ねてきた。
おっと、ただ見てるだけだから怖じ気づいたと思われてしまったか…?
「いや…やる。どんな味か興味がある」
言いながら、ちょっとカッコつけて崖のへりに立つ。
わあ高ーい。別に高所恐怖症じゃないけどさすがにこの高さは怖いな……前言を撤回してこの試験をしたくないと思うくらいには。
「そ!……あたし、アンタの事ケッコー見所あると思ってるからこんな所で脱落しないでよ」
「へ…!?あ、ああ…」
一体突然どうしたんだあの試験官。
も、もしや、さっきのは、巷で言うところの恋愛フラグってヤツじゃあないですか?
どうしよう、どうすべきだ。
こんな時どんな顔をしたらいいのか分からないの、笑えばいいと思うよ…ってアホか!
「どうしたらいい刑部ッ!」
「早に行け」
どんっ、と背中をどつかれて前につんのめる。
崖の際に立っていた私はもちろん落ちた。張られた糸をなんとか掴んだが完ッ璧に気を抜いてた…おいおいおい!私じゃなかったらアウトだぞ!
「刑部ゥ!やっていい事と悪い事があるぞ!常人だったら絶対落ちてたよコレッ!」
「心配するナ、ぬしにしかせぬ」
そーゆう問題じゃないだろうが…はぁ。

ちなみに帰りは恐惶で崖を駆け上がりました。
受験生を何人か轢いて落としてしまったのは正直すまんかったと思っている。

(15/38)
*prev | Title | next#



×
- ナノ -