初めて出会ったとき、俺はこの人に着いて行こうと思ったんだ―――
………もしかしたらそれは俺の人生で最初にして最大の失敗だったのかもしれないけれど。
松永さんちの忍くん
ある朝、いつもよりも機嫌のいい松永さまがいた。機嫌のいいといっても普通の人からすれば分からないだろうが。
だがそれと同時に嫌な予感もした。あの方が機嫌のいいときは大抵自分の欲求が満たされたとき――つまり何かしらの欲しい物を手に入れたときだからだ。
そして今日の機嫌の良さは生半可なものではない。松永さまの周りがきらきらと輝いて見えるあたり、相当すごいもの(つまり俺達にとっては相当まずいもの)を盗ってきたに違いない。
(うわぁ…聞きたくないけど聞いて欲しそうだしなぁ…)
「はぁ…。松永さま、今日は一体何が手に入ったんですか?」
「あぁ、卿も見るといい。今回のはなかなかの代物だよ」
そういって松永さまが嬉々として見せてきたものに俺は目が点になった。
それは立派な六爪の刀。確かに今回のはなかなかのを盗ってきたようだ。……ん?まてまて…六爪の、刀?ひやりと背中を汗が伝う。
いやまさか、そんな馬鹿な、ね…?恐る恐る確認すべく口を開く。
「松永さま、アンタまさかそれって…!!」
「いやはや気づいてしまったか…相変わらず卿のその観察力はたいしたものだな」
その通り。独眼竜から頂いてきてしまったよ。
はははと悪人のように笑う松永さまに頭が痛くなる。というかよく独眼竜相手に無傷でしたね、と呆れを通り越して感心していると次の一言で固まってしまった。
「つい少々手荒な真似をしてきてしまったがね」
(なんだって……?)
松永さまの手荒な真似というのはとりあえずなんでも爆破してくるという意味不明かつ唯我独尊な発想が由来している。
それを理解しているため更に頭痛がひどくなった気がする。おそらく向こうの兵士の何人かは爆破に巻き込まれてしまっただろう。松永さまにいつも言い聞かせているため死人はでていないと思うけれど。
しかし、たしか独眼竜…伊達政宗、それにその右目…片倉小十郎は相当兵士及び民に好かれていたはず。また同時に二人も彼らのことを大切にしていると聞く。そんな彼らの兵士を爆破に巻き込んでしまったわけで。
そこまで考えて俺は思った。この時点で我々の印象は最悪じゃん、と。
「まっ、松永さま!!今すぐそれ独眼竜に返してきてください!!」
「卿は不思議なことを言うな?私が折角手に入れたものを見返りなしに手放すとでも?」
「そういう問題じゃないですよ!!」
「やれやれ…卿は我が儘なのだな。よく覚えておこう」
呆れたようにため息をはく松永さま。その顔に反省の色は全く見られない。いやいや、なんで俺が悪いみたいになってるんですか。どう考えても貴方でしょう悪いのは。