短編 | ナノ

煮詰まってる?

 ―それは、例年のごとく、毎日真夏日に相応しい気温をはじき出している暑い日の事だった。

うだるような暑さ。自然と汗が体中から流れてしまう。
毎日のように蝉が騒がしくなき、夏の暑さを盛り上げている。
ついつい気を抜くと暑さに負けそうになるのは、老若男女誰しもだろう。
皆、夏の暑さに辟易し、少しでも涼しさを…と、暑さを凌げる場所を探す。


都内にある大学近くにはお洒落なカフェ、カフェ・エスペランサ。
今日もそこは、若い女の子達がたむろっているのが目立つ。


真夏日であり、気を抜くと脱水症状にでもなるくらいの炎天下だ。

ちょっとお茶しに…と、近くの大学生、はたまたカップル連れがいつもより多めに午後のカフェを楽しんでいた。
お店はファンシーで、全体的にピンクで、売りは女の子向けに作られた甘いスイーツらしい。このスイーツは、昔、テレビで放送されたこともあり、ここの人気メニューだ。

そんな、ファンシーで可愛らしいカフェにそぐわない二人の男。
男たちはカフェの窓際の席に腰掛けている。

いかにも、インテリ系、といいたくなるほどの生真面目そうな眼鏡の男と、大柄の体育会系という言葉が似合う筋肉質な男だ。
どちらも、ファンシーという言葉はちょっと合わない。

「なぁ…はじめ。俺、やばいかもしれない」

どこか暗い沈んだ面持ちで、鷺沼猛(さぎぬまたける)は親友羽柴一(はしばはじめ)にそう切り出した。

羽柴はカフェのオススメパスタを頬張りながら、切羽詰まるような空気を纏わせている猛に首を傾げる。

「俺本気なんだ」
「はぁ…」
「もう、煮詰まってるんだ、毎日毎日」
「はぁ…」

鷺沼はただただ、はぁ、と相槌を返す。
この鷺沼猛という男は、名前のとおり雄々しく大柄で大雑把、いかにも男らしい…だけど肝心なところでヘタレてしまうというなかなか味のある男だ。

失敗は多いし、人がいい故にいらぬ事柄も多々引き受けてしまうお人よし。
人柄ゆえに、自分には何の落ち度もないのに被害を蒙るが、笑って受け止めてしまうおおらかさも持っている。
なので、こんな沈んだ顔をするのは稀なのだ。


「どうした…。馬鹿で脳天気なお前が」
「馬鹿で脳天気って…」
「事実だろう」

ニヤリと嫌な笑いをする羽柴。
「うぐ…」

馬鹿で脳天気、とまさしくよく自分が言われる事をはっきりと言われ、鷺沼は何も言えなくなる。
自分でも、馬鹿で大雑把、と嫌になるほど自覚しているのだ。

「確かに俺は馬鹿だけどさ…」

鷺沼は大きな身体を縮め、しょぼん、と肩を落とした。

そんな鷺沼の正直すぎる反応に、鈍感とよく言われている羽柴も少し良心が痛む。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -