短編 | ナノ

SIDE天龍寺


「いいの…?」

三井が窺うように俺に投げかける。

「なにが…?」
「なにがって…さっきの…、さ」
「ああ。どうだっていい…別に」

どうだっていい。
そう、どうだっていいんだ。別にあいつと付き合うとか、なんとか。
俺にしたらどうだっていい。
彩のことがわかれば、あとはあんなやつ捨てるだけだ。
俺のそんな考えが顔に出たのか、三井は顔を顰め、抗議をする。


「うわぁ〜、鬼、鬼だね。あんなに付き合えて嬉しいって笑っていたのに」

嬉しい…ね。

「俺は、彩以外興味ない」
「は…はぁ…」
「その為なら、例えどんな人間だって、使うさ。彩に会えるなら…」

そう、あの蝶にもう一度会えるなら俺は…。
誰に何を言われても構わない。

きゅっと、こぶしを握る。
あいつのことなんて、どうだって、いい。
俺には彩さえ、いれば。
彩の情報さえ、あれば。

呆れたような視線を向ける、に背を向けて、根城にしている廃墟から出る。
途端、夜の風が、頬を叩いた。

俺はポッケに手を突っ込んで、夜の街へと繰り出した。

美しい蝶、彩に合えることを願って。
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