短編 | ナノ

ー牡丹

牡丹。










その人は、まるで華みたいな人だった。










綺麗な綺麗な、人を魅了する花。







《華》以外に彼を例える、いい例がボキャブラリーの少ない俺は、見つけられない。






その人は、花なのだ。


美しい、華




ただの華ではなくて、

高値の華。




手折ってしまえば、簡単に枯れてしまうような、

命が消えてしまうような



儚い花。





姿を見るたびに、全てを自分のものにしたい汚らしい欲望と、
全てをかけて守りたい欲が生まれた。



矛盾した、可笑しな、感情。

正常にならない想い。







こんな感情、知らなかった。


こんなどうしようもない感情の名前なんて知らなかった。



こんなどきどきと、切なさと、苦しさを伴った複雑な感情は。





知らなかった。
知らなかった。




知りも、しなかった。

貴方に






出会うまでは……。












―牡丹。

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