短編 | ナノ

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 世界一の魔道師・リリルク・ベルグは、その日、国の王に呼ばれ、久しぶりに街へと下山していた。
リリルクがこうして下界に降りる事も久しい事であり、また、人前に姿を見せる事も珍しい事だった。


 リリルクは不機嫌を隠さずに、苦虫を噛んだような顔で足早に街中を歩く。
周りの人間の謙遜をみるたびに、リリルクは眉を潜め、機嫌の悪さをあらわにした。


 普段は山小屋で、薬草を摘んだり、新しい魔法を考えたりするのがリリルクの仕事であり、人前に出るのをよしとしないリリルクは、滅多に山から降りない。

リリルクは元々人間が嫌いで、用事がなければ人前に出ないし、他人と関わるのが煩わしいとさえ思っている。

今回、山を降りたのは、一重に国の王に緊急事態だと何度も催促を入れられたからだ。
普段のリリルクなら例え緊急と言われても動きはしないが…今回ばかりは少し街に降りる用があった。


 リリルクは、世界一の魔法使いであり、その魔力は世界中から恐れられたり、嫉まれたりする程である。
国ひとつ、リリルクの力で消すのは訳無い事だし、昔は一度、実際に小さな国を滅ぼした事がある。
他の魔道師から、何度か呪いも受けた事があったが、すべて跳ね返したほどだ。

誰もリリルクの魔力の前には、無力だし、誰もリリルクには勝つ事は出来ない。
持っている魔力が違いすぎるのだ。
通常では計りきれない程の魔力を、リリルクは幼い頃から兼ね揃えているようだった。人は彼を、天才といい、幼い頃から周りと違う目で見ていた。


街の人々は、リリルクの姿にヒソヒソと、言葉を零す。

黒いマントと黒いローブを羽織り、銀色の眼鏡をかけたリリルクの出で立ちは、冷たい印象を受ける。

元より、顔も一つ一つのパーツが計算されたように配置されていて、よりその冷たい印象に拍車をかけていた。

頭に被っているフードから除く銀色の太陽に透ける髪は、とても綺麗なのだが、冷たいリリルクの表情をより冷たく見せた。
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