短編 | ナノ

決意



僕らはもやもやとしたものを抱えながら、それでも毎日電話をし、お互いの事を話す。
電話。
それしか、二人を結ぶものは、なかったから…。


「なぁ、飛鳥。俺、お前に会いたい…会って、謝りたい…」
「え…」
「今まで辛かったって言ってただろ、ミムラさんがいてくれて良かったって。
でも、悪いのは俺、だろ。俺が全ての原因なんだろ。だから、謝りたいんだ。謝って済む問題じゃないけど…。俺が、謝りたいんだ」
「そんな…」
「ごめん…昔のお前にこんなこと言って…」
「いいえ…」

僕が木下飛鳥だとわかってから、ミムラさん、いや、朔夜はしきりに謝ってくる。
でも、僕は僕であって、朔夜の時間の僕ではない。

十年後の僕に言わないと、朔夜は仲直りできないしよりも戻せないのだ。


しかし、どうして、僕らはこうして電話しあえるんだろうか。
あれから検証した結果、電話は朔夜から、しかも僕が自宅にいるときしか通じないらしい。

僕と会った事により、朔夜と僕との未来のタイムパラドックスは可笑しくなったりしないのだろうか。
あまりに今がファンタジーで非科学過ぎて、よくわからない。
僕が頭でっかちすぎるのだろうか。


あれから、朔夜は度々僕と十年経ったら会おう、と強請ってきた。
もちろん僕も会いたい。

僕は十年先も朔夜を愛している自身はあったし、十年くらいの約束なら、なんとか覚えていられる、と思っていた。
でも、何度も会う日を決めるものの、結局、僕たちは合えなかったらしい。
電話報告は、いつもしょんぼりとした、朔夜の声だった。


「仕方ない…のかな…、」

僕たちは、別れてしまう運命だったんだろうか。
赤い運命の糸なんて、ないのかな。


学校に行けば、僕の時間の朔夜が相変わらず、新しくできた恋人といちゃいちゃしていた。

胸は痛むけど…、でも、もう暗く考えない。
僕には、もう一人の未来の朔夜がいてくれるから。
十年経っても、愛しているといってくれる、彼がいるから。

今は僕を見てくれなくても、どんなにつらくてもがんばれた。
他でもない、朔夜がいてくれるから。


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