短編 | ナノ


出会って、初めての冬。
クリスマスが近いその日。僕は彼に呼び出され、告白されました。
好きです、と。
顔を真っ赤にして。彼は僕の手をぎゅっと握りしめました。

まさか…彼の方から告白してくれるなんて。夢のよう…。
だけど、嬉しい反面到底その言葉を信じられませんでした。

僕は彼と違って、美形でも、楽しい話題も出せない、どこにでもいるような人間だったから。彼はけして、僕なんか好きにならないと思っていました。


「嘘でしょ…」
「ほんと、です」

冗談だと、言えば、彼は怒った顔になり、本気です、という。
そんなことない、といえば、どうして信じてくれないんですかと悲しげな顔をする。
その真剣な表情に、言葉を受けとらない僕も心が痛む。
だけど、すぐには信じられませんでした。


「だって、僕はドンくさくて、君なんかと一緒には」
「俺は先輩が好きなんです。ドンくさいところも可愛くて好きです」
「でも…」
「好きなんです」
「だから、」
「好きです」

嘘と言い続ける僕。嘘じゃないと言い張る彼。

「先輩が、好きです…」

あまりにそんな事が続いたため、ついに僕は彼の言葉を信じ、彼とお付き合いすることになったのです。到底信じられないけれど。
信じてみたかったから。
他でもない、僕が好きな彼を、信じてみたかったから。


「…僕で、よかったら」
「先輩っ!」

ぎゅっと僕を胸に抱きしめる彼のその時の顔は…、本当に嬉しそうで。
じわじわと、胸には温かなものが溢れました。
それは、いわゆる幸福感≠セったのかもしれません。
咲夜くんの胸の中は、本当に温かなものでした。


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