作品 | ナノ
こちらの続編となっております。







 ○月×日
 今日も東堂くんはかっこいい。自慢の自転車(名前はなんていったっけ?)に乗って、今日も颯爽と長い長い上り坂を駆け上がっていった。「東堂くん、がんばれ」なんて呟いてみたけれど、彼に届かないのなんて知ってるの。だって、彼には、

 ○月△日
 あの人たちって、学校ではいつも一緒にいない気がする。意図的にくっつかないようにしてるのかな?でも東堂くん、なんかかわいそう。あのコは冷たいのね。私なら、東堂くんの愛を受け止められるのに。

 △月□日
 今日、本屋さんであのコを見かけた。たまたまレジが隣だっただけだけど、ちらっと見ちゃったの。あのコ、自転車競技なんて興味ないって言ってなかったっけ?
 『カンタン!誰にでもわかる入門書』なんて、なんのために使うのよ。やめてよ。彼女面しないで。

 △月#日
 つらい。

 ☆月○日
 気づいてしまった。東堂くんが出てる大会、あのコもちゃんと来てるんだ。やめてよ。やめてよ。近づかないでよ。興味ないって言ってたじゃん。お願いだから、そのままのあなたでいてよ。
 そのままの、東堂くんを傷つけるあなたでいてよ。

 ☆月×日
 そろそろ春がやって来る。東堂くんとあのコはいつも通り。あのコは今日も隠れて自転車の勉強をしていた。家でやればいいのに。隠れてるフリして見せつけてるんでしょ?ねえそうなんでしょ?嫌なコ。最低。

 ☆月◎日
 やった!やった!やった!やった!東堂くんに告白したOKもらった!!!!あのコと別れたら付き合おうって言ってくれたやったやったやった!!
 早く別れないかな。ああ今までで一番いい気分!!ロードレースだっけ?それ勉強しててよかった!!でも東堂くんの自転車の名前また忘れちゃったけど!まあ、いっか!
 嬉しい嬉しい嬉しい!!

 @月△日
 東堂くんといられるのが楽しすぎて日記忘れてた。でも東堂くんまだアイツと別れないなんでおかしい。アイツがきっと東堂くんを引き止めてるんだ苦しませてるんだ。本当に嫌なコ。

 @月#日
 東堂くんはやっぱり優しい。ちょっと泣いてみせたら、ちゃんとアイツと別れるって言ってくれた。
 早く、早く早く早く早く別れて別れて。気づく前に別れて。別れよう。別れなきゃ。別れさせなきゃ。

 ●月●日
 勝った。アイツに勝った。私が今日から東堂くんの正式な彼女です!!!!浮気相手?そんなの知らなーい!!東堂くんと私がしてたのは浮気なんかじゃないんだから。そんなんじゃないから。だから大丈夫、大丈夫、わかってる。

 ●月◆日
 東堂くんキスしてくれなかった。なんで

 ■月×日
 アイツ見てる東堂くん嫌い。東堂くん見ようとしない努力してるアイツも嫌い。でも一番嫌いなのは、

 ▲月◎日
 私悪くない。東堂くん好きなのは私。誰より好きだもんじしんあるし、わけわかんない

 ▲月※日
 あのコが本屋にいた。手にはあの本があった。うつむいてたけど知ってるんだ私。もうやだなあ。こっちまで泣きたくなってきたじゃん。

 ○月○日
 もう、終わりにしよう。



――――――――――



「……いま、なんと言ったんだ?」
「聞こえなかった?別れようって言ったの」
「…名前さんの期待に応えられなかったか?」
「ほら、またさん付け。期待というか要求にすら応えてないじゃん?もう東堂くん好きじゃなくなっちゃったんだよね〜」



 あはは、と笑ってみせるけど、力ない笑顔だというのは自分にもはっきりとわかる。東堂くんの顔がこわばるのもわかった。
 恋い焦がれて、自分で始めて、自分で掴み取ったものだけど、もうそれは棄てることにした。
 ―――いや、『返す』ことにしたの。



「今まで、ありがとう」
「…………すまない。俺は…」
「ねえ、ゴミを吐き出すゴミ箱ってさ、いらないよね?」
「なんの話だ?」
「あのコの隠し事って、ゴミみたいなものだと思うから。私はゴミ箱かなあって」
「あの子?隠し事?ゴミ?……名前さ…名前は何を言っているんだ?」
「ゴミ箱はもうキャパオーバーだから、今度は東堂くんが自分でゴミを拾って集めてね。それじゃ」
「……っ!!…………すまない!!本当に、」



 東堂くんはバカじゃないから、察しも早いらしい。最後に後ろから聞こえた言葉は震えていて、それでも、今までで一番感情がこもっていたように思えて……私は笑ってしまった。
 ずるいよね、『ありがとう』だなんてさ。
 こちらこそありがとう、東堂くん。そして、さよなら。



――――――――――



 ○月×日
 あなたたちは隠し事が多すぎて、私というゴミ箱は満杯になってしまいました。キャパオーバーです、キャパオーバーです。
 そうして耐えきれなくなったゴミ箱は、静かに静かに、そっとゴミを吐き出しましたとさ。
 ゴミを吐き出すゴミ箱なんて、もう必要ないだろうから、さよならね。
 めでたし、めでたし。

 東堂くん、本当にあなたが、好きでした。
 そんな私が、嫌いでした。
 この想いも、きっとゴミだから。


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