俺から見える変化




「トーマ! シンが大変!」

 何事かと思えばあいつが無理矢理シンを連れてきているところだった。
 シンの胸元にはガーゼとサージカルテープがでかでかと貼り付けられていて、シンは不機嫌極まりない表情で俺を見てはフイッと顔を背けた。

 こいつが大騒ぎしてるってことはまた喧嘩でもしてきたんだろうか。割とシン買っちゃうから。腕でも口でも勝てるから余計なんだろうけど。

「で、何があったの?」

「今日シンが部室に来たら赤くなって腫れてて……!」

「は? シン、ちょっと見せて」

「はあ……うざすぎ」

 あいつが施術したとしか思えない下手くそなガーゼをそっと取り除いたら、そこには二つの穴とそれを繋ぐバーベルが入っていた。

「……ピアス?」

「……チェスト、そこなら制服着てたら見えないし、開けてみた」

「どこで?」

「病院。腫れとかすぐ引くらしいから、そのまんまこいつの練習観に行ったらこれ」

 心底めんどくさそうに答えるシン。全く、高校生でこんなボディピアス開けちゃうなんてお兄ちゃんびっくりだよ?
 最近髪も毛先色抜いて入れて派手にしてみたりし始めたし、大きめの反抗期でも来てるのかな? というか、髪は割と怒られないのか。シン、成績良いから見逃されてるのか?

「ほら、ただのピアスだよ。心配しなくても大丈夫」

「ほんと? でも、どうしてピアスなんて……」

 俺と同じで真面目なシンがいきなりグレたからこいつも心配になってきているらしい。
 俺としては、絶対にこいつが原因なんだと思うけど。

「おまえには関係ないだろ。オレがやりたくてやった」

「シン……」

 シンがいつも以上に冷たい態度を取るからこいつもしょんぼりしてしまった。
 身内並みに近い距離にいて兄弟同然に育ってきたのに、たまにこれだから。俺はもうシンの兄離れにも慣れてきたけど、こいつはそうじゃないんだよ。シンは気付いてないけどさ。

「シンのことは俺が何とかしとくから、おまえは練習に戻りなさい。ボーカル欠けてたら練習に支障が出るだろ?」

「う、うん、そうだね。慌てて出てきちゃったけど…………うわあ、ごめんなさい。戻るね」

 そう言いながら携帯を取り出して、着信の数に驚いている。
 また慌てて帰っていく後ろ姿を見送りながら、どさくさに紛れて帰ろうとするシンはしっかり捕まえておいた。

「何」

「何、じゃないでしょうが。理由話してくれないと、学校に言うよ」

「おま……まじで最低最悪だな」

 どう言われてももう慣れてるからいいけどね。
 部屋の中にシンを招き入れて、コーヒーを出すと苦そうな顔をしながら延々と砂糖とミルクを入れている。



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