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「……必死だよ。どうしたら君が僕を意識してくれるか、何を言ったら喜んでくれるか。そればかりだよ」

 そう言ったイッキさんはもういつものイッキさんのサイズに戻っている。
 やっぱり、逆でもいいんだ。と呟いて、イッキさんはふわりと笑った。

「身体のどこかにキスしたら戻れるって聞いてたけど、君からじゃなくてもいいって分かって安心した」

「えっと……元に戻る為なら全然協力しますよ?」

 イッキさんにはいつもお世話になっているし、それに、私はきっと、イッキさんのことが好きだから。イッキさんが困っているなら助けてあげたいと思う。
 そう思ってそう言ったけれど、イッキさんは睫毛を臥せて首を振った。

「違うんだ。君に想いが通じてからじゃないと、してもらうのは嫌だなって思ってたから」

 イッキさんは私の腰を引き寄せて顔を覗き込んでくる。目の力が効かないとしても、好きな人とこんな距離で見つめ合って意識しないはずがない。

「やっぱり、効いてるんじゃないかって思うよ。そうだったら、そんな顔されても一時の気の迷いじゃないかなって思ってしまう」

「あの、イッキさん、恥ずかしいです……」

「……君の身体、熱くなってきたね。服越しでも分かるよ。ちゃんと意識してくれてるんだ」

「あ、当たり前です!」

 逃れようとしてもびくともしない。イッキさんは嬉しそうに、艶やかに笑ってる。切れ長の綺麗な瞳が不思議な光彩を放ったように見えた。私にもその力は効いていると思う。

「僕のことが好き? そういう顔してるよ」

「う、自惚れないでください!」

「嘘つきは良くないな。さっきから君、本気で逃げようとしないし、心臓の音聞こえるし。認めないなら先に食べちゃうよ?」

 まあ、強気なところも可愛いと思うけどね。
 イッキさんの顔がゆっくりと近付いてくる。焦らすようで、私の反応を窺うような速度で。

「イッキさんは、私のことをどう思っているんですか?」

 余裕を湛えていた青い瞳が見開かれる。

「えっ? これだけ押してもまだ分からないの?」

「イッキさん、他の女の子にも言ってるじゃないですか」

 少しムッとしているとイッキさんは小さく噴き出した。

「僕は君だけが好きだよ。君は特別な女の子。分かってもらえないなら、何度でも言うよ。君が好きだって」

 優しく重なった唇に応えるように目を閉じた。
 イッキさん、私も好きです。
 少し離れたところに呟くと、本当に嬉しそうにイッキさんは笑った。



 ハッピーバレンタイン!

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