一夜明けの最愛
「…………」
目が覚めた時、横を見るとすげえ間抜けな寝顔があった。いや、間抜け過ぎるだろ。口開いてんぞ。
昨夜見せた普段とのギャップで驚くほどの扇情的な表情や、理性が全部飲み込まれてしまうくらいの色気はどこにも見つからない。
こいつはこのまま変わんないんだろうなと思うとひどく安心した。
「む……」
柔らかい頬をつつくと眉間に皺を寄せてオレの指から逃れようとする。
小さく名前を囁いてやると身を捩らせてから彼女がゆっくりと目を開く。
「ん、シン……」
すぐに名前を呼ばれることってこんなに嬉しかったか。眠気眼の彼女を見て馬鹿みたいににやけてしまう。
「おはよう」
「うん、おはよう。……! っ、あのっ、私お風呂に!」
完全に目が覚めた途端に慌ててオレの側から離れようとするから、腰に手を回して引き寄せる。
「ダメ。逃がさない」
「シンー……」
強く抱き締めると少し苦しそうな声で抗議する。そんな声出しても無駄。むしろ、逆効果なんだけど。
「うー、恥ずかしい……」
「そう。オレはすげえ嬉しいよ。おまえが受け入れてくれたこと」
抵抗をやめて大人しくなった彼女の髪を撫でると、滑らかで柔らかい指通りだったはずなのにめちゃくちゃに絡まってて、また夜のことを思い出した。
「絡まってる」
「だって! それはシンが……!」
「おまえが頭動かすからだろ」
「違っ! だってその…………気持ち良くて……」
「うん……」
顔を真っ赤にして蚊の泣くような声で。その言葉が男にとってどれほど嬉しいかなんてこいつは知りもしないだろう。
嬉しくて旋毛にキスすると、唇にしたわけでもないのにびくりと震えるからまるで感じてるみたいに見えた。
「シン、汗かいてるからお風呂に……」
「一緒に入る?」
「っ!」
全部見たんだから別にいいだろ。なのにこいつは恥ずかしがってまた逃げようとする。だけど、もう逃がさねえよ。
「シンがまた大人の男の人になっちゃった……」
「嫌?」
「そうじゃなくて、ドキドキしてどうしようもなくて」
「じゃあもっとドキドキして。どうしようもないくらいオレのこと愛して」
林檎みたいに真っ赤に熟れた頬の彼女に覆い被さって、そっと唇に口付けるとまた身を震わせる。
それがたまらなく可愛くてもう一度。舌を滑り込ませると漏れる息がやけに色っぽくて理性が揺らぐ。
「はあ、シン……お風呂……」
「そんなの後」
柔らかい肌に吸い付いて鬱血の花を咲かせる。そこを舐めるだけで気持ちいいのか身動ぎする。
「あ、それとも、風呂で続きする……?」
「シンのバカ……」
それからまた小さな声で後から入ると付け足す。別々に、とも聞こえたけど知らない。そんなのオレ聞いてないし。無効だろ。
優しく触れると甘く息を吐くおまえがどこまでも愛しいよ。
身も心もオレだけを好きになって。目を逸らす間なんて与えないから。
これからもオレだけの最愛。
2013/09/24
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