主人公side




 今日初めてキスをした。ずっと家族みたいに思ってた。私の中で可愛い男の子のままで止まっていたシンと。

『付き合おう。もうおまえと幼馴染には戻れない』

 こんなに誠実で、真摯な態度のシンを見たのは初めてで吃驚した。
 それ以上に、シンが私をそういう風に見ていたのも、告白されて初めて気付いたから。

 シンは昔から口が達者で何となく言いくるめられてるって分かってた。
 そんなの脅しだよって言えば少しだけ笑って、嫌だと思ってくれてるの? なんて、嫌に決まってる。

 兄弟みたいに生まれた時から一緒に育ってきたのに。そんな大事な幼馴染だよ? もう話せない、もう会えないなんて嫌。

 そう答えた瞬間にもうこの申し出を断れなくなったのも分かった。
 選択肢が、ない。
 考えさせて、なんて言う間も、何でもないように流す事も出来なかった。

 シンの事、今更どうやって男の人だと思えばいいの?
 どう視点を変えて見ればいいの?
 そんなの杞憂だった。

 私はシンを“可愛い弟みたいな男の子”で強く認識していた為に気付いてなかった。

 壁に着いていたシンの手の位置は軽々と私の身長を越えていた。
 こんなに大きかった?
 シンはいつの間にこんなに……

 頷いた時に見せた表情が何とも言えない程妖艶で、その熱っぽい瞳から目を逸らす事が出来なかった。
 私の知ってるシンじゃない。

 あ。

 そう言う間すらなかった。少し屈んで顔を近付けてきたシンは迷う事なく私の唇に自分のものを重ね合わせる。
 何が起こってるんだろう。いや、分かってるよ。何をされてるかって事くらい。そうじゃなくて。

 昨日までただの仲良しだった幼馴染が告白してきて、私にキスをしている。
 状況の変化が大きすぎて着いて行けてない。

 離れた後に羞恥が襲ってきた。初めてだった。まさかそれがシンになるとは思いもしなかった。

 急に大きく見えだした幼馴染。年下の男の子だって、実は少し嘗めてた。
 もうシンは知らない人になってしまっていた。
 もう戻れない。
 凄く怖かった。今までが全部崩れていくのが。

 シンの事嫌いじゃない。そういう目で見た事がないだけで。
 もう男の人として意識せざるを得なくなった。
 キスされてから、暴れ出した心臓が全然おさまってくれない。


 2013/02/22





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