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勢いに任せて言ってしまえば少し楽になった。
どうしようもなく恥ずかしいけど、伝えられて良かった。
私達の価値観が違ってずれてたって、絶対に分かって欲しいのはシンが大好きって事だから。
「シン?」
「ああ、くそ……」
俯いてしまったシンを覗き込むと真っ赤な顔で瞳が熱く潤んでいた。可愛い。愛しくて抱き締めたくなる。
そう思うのも束の間で、抱え込むようにして頭を抱かれると始めから激しいキスをされた。
「んっ、ふ、あ」
一生懸命に酸素を探すも、せっかく確保した隙間を何度も塞がれてちゃんと息が出来ない。
それでも怖いと思わなかった。全部受け止めたいと思った。
暫くして離れた唇。私は肩で息をしていて、もう唇が熱くて仕方がない。
シンはそんな事無いんだろうと思って見上げれば、僅かに息切れしているシンが映った。
「苦しかった? 悪い。優しくしてやれなくて」
「ううん。苦しかったけど、怖くなかったよ。あのね……その、もっと、したい」
「っ! さっきからほんと何なんだよ……」
「ん……」
次にくれたのは優しいキスだった。
これだけじゃ足りなくなるくらい可愛いキス。
いつからこんなに好きになって、いつからこんなにシンでいっぱいになってたのか分からない。
それでももう怖くないんだ。やっとシンを受け止められる。そう思えるくらいには気持ちが追い付いてきた事が嬉しい。
もっとシンが欲しい。もっと満たして欲しい。
いっぱいいっぱいになるのが怖くてたまらないのに、それとはまた別にそんな欲求も増えていく。
どれくらいワガママにシンを困らせれば済むのだろう。
「ん……」
「終わり」
唇が離れると物足りなさと寂しさが心を占めた。
シンをずっと見つめていたら困ったように眉を下げる。
「そんな顔すんなよ。もっとして欲しいんじゃないかって期待する」
「うん、もっと、シンが欲しい」
「っ」
真っ赤な顔をしてシンが離れる。頭を抱え込んで黙りを決め込んだまま数分。
「……触ってもいい?」
静かに頷いたらシンは私の頬を撫でる。壊れ物を扱うかのように優しく、ゆっくりとした動きが気持ちよくて思わず瞼を閉じて温もりを感じていた。
「おまえってほんと犬みたい」
少し笑いながら、私の髪を撫でて額をくっつける。
本当に犬と戯れているような仕草で緊張感が抜け落ちてしまった。
「その内、そういう事になったら、ちゃんと大事にするから覚悟しとけよ」
「? 大事にされる事?」
「そこじゃねえよバーカ」
今はまだこの優しい触れ合いの温もりに身を委ねる。
2013/05/09
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