主夫になりました3

数ヶ月後

 「ハンカチもった?」
 「もった。」
 「んー、ネクタイ曲がってる。」
 「ん。」

 あれからしばらくして、俺も主夫業に慣れてきた。こうやって夫をフォローしつつ、さりげなく可愛いネクタイピンとか着けさせて、夫の周りの女への牽制球を投げられるくらいになった。ふはは、しめしめ。
そのまま玄関まで彼をお見送りする。

 「じゃ、行ってくる。」
 「あ、忘れ物してるよ。」
 「え?」

靴を履いていた彼が振り返ったとこで、唇にキスした。

 「…いってらっしゃいのちゅー。」

彼はぽかんとした後、笑ってくれた。俺も照れ臭いけど、どうしてもしたかった訳で。こんな行動に出てしまった。

 「というか本当に忘れ物した。」
 「え?なに?取ってくるけど。」

そんなことをしていたら、本当に彼が忘れ物したらしい。何を忘れたのかと、彼の鞄を覗こうと前に出ると、キスされた。

 「いってきますのちゅー。
それじゃ、いってきます!晩御飯はシチューで!」
 「あ、え、あ、」

咄嗟で何も反応出来ないうちに、彼は出勤していった。新婚か!新婚さんか!と自問するが、どうしてもだらしない頬の筋肉は隠しようがなかった。





 「…」

 一人でテレビを見る。今までこんなにテレビを見ることはなかったから、いちいち新鮮ではある。
ちらりと時計を見ると、夜の11時。また彼は終電か泊まりらしいな。ラップをかけたおかずを見つめて、何とも言えない寂しさも感じた。その時携帯が鳴り、もうすぐ帰るという彼の文面を見た途端、ウキウキとした気分になる。一日中、好きな人のことを考えているっていうのは、辛くもあるけどこんなに嬉しい。



 「ただいまー。」
 「おかえり。」

 帰ってきた彼は玄関入って早々にキスする。

 「ただいまのやつ。」

なんだかなぁとにやけながら、キスし返す。

 「おかえり。ちゅっ」

だからもう、そういうのは今思うといい大人なのに、とかツッコミたくなる。ああもう本当新婚怖い。



*



 お風呂(洗いっこという暴挙)とご飯(あーんという暴挙)を済まし、二人で布団に入る。何となくだけど、ご飯の時から、そんなアプローチをかけられていた気がする。食事中にこっそり目配せするなんて、子持ち夫婦のようなアプローチに少しどきりとした。
布団の中でちらりと彼を盗み見ると、特に何もなさそうな顔をしていた。

 「寝た…?」
 「まだ。」

彼の足に足先で触れると、逆に向こうから足をからめられる。積極的だ。彼はとろんと柔らかく細めた目をしていて、どこかベールを帯びたように見えた。

 「ん…」

彼に覆い被さって、キスする。まずはさっきまでしていたようなのを繰り返しながら、だんだんと唇に吸い付くように。

 「んぅ」

暫くすると、彼の口が薄く開き、そこから舌がちろりと覗く。そこを舌で触れると引っ込んでしまった。閉じた唇を舌でノックしながら、体を触る。

 「ん、ん…」

今度こそ開いた唇に舌を入れ、彼の舌に絡ませる。舌に吸い付いて、寝間着の中に手を突っ込む。脇腹をなぞる。舌に吸い付いて唾液を啜って、自分のを送り返す。

 「んぅう、っ、はぁ…」

口を離すと、出来上がった彼と目が合う。どうこうしたい衝動を抑えて、今度は彼の耳に唇を寄せる。外側の溝をなぞったあと、耳の穴に舌を入れる。

 「っ、あ…」

服の中の手は休めずに彼の胸を揉む。もちろん膨らみはない。皆無だ。それでも乳腺を刺激したほうが気持ちよかろうと、ない乳を鷲掴む。

 「っ、う、あ、あ…」

十分に揉んだあと、立ち上がった乳首を掴む。全体的に揉みつつ引っ張ってやると、彼は額に手の甲を押し当てて声を上げた。

 「ひもちいい?」
 「っ、ふぅ、あ、」

軽く頷かれてゾクゾクと背中が震える、乳首から脇、臍、となぞって、指先を股間にまで到達させる。

 「びちゃびちゃ」
 「うるさい…」

まだ脱がせてなかったパンツは、既に染みが滲んでいた。その染みを広げるように触ると、彼の体がびくりと跳ねる。まるで見たくないと言うように彼は額から目の上に手を移して、熱い息を漏らした。

 「はぁ、は、あ…」

彼の熱い声だけが響く。パンツ越しに形をなぞる。このパンツだって俺が選んだ。もし万が一浮気された時ように、まさかの柄をチョイスしといた。しめしめ。

 「あ、あ…」

彼の太ももをなぞる。内股側に手を滑らせると、足がびくんと跳ねる。そのまま手を滑らせ、パンツの下に手を忍ばせる。

 「ごめん、冷たいまんまだけど。」

断りをいれてから、ローションを垂らす。その滑りを活かして、指でなぞる。パンツを引っ張り食い込ませると、彼は喉奥からひっくり返った声を上げた。かわいい。
しばらくそうやって遊んでいたら、恥ずかしそうに彼が身を捩った。

 「っあ、っふ、う、な、なんだか、お前最近…前技しつこくないか?」
 「だって…俺こんくらいしか、役立たないし…」

彼の言うように、最近はかなり気合いを入れていたりする。やはりどんなに考えても、この立場は不安がちらつく。そんな中で俺が俺の必要性を感じられるのなんて、セックスぐらいしか思い付かなかった。それ以外は俺でなくてもいい訳だし。
彼はこの発言を聞いて、さっと怒ったように眉を寄せた。そして間髪入れずに俺に頭突きする。い、いたい、いた。いや、本当痛いんですが…。

 「…本気で言ってんなら、お前のちんこ切るぞ。お前にとってセックスは義務なのかよ。
そもそも俺が好きだって言ってんだ、文句言うな。」
 「うあ、あ、はい…」

つくづく、この人の、こういうところが好きだ。不安とか全部ぶっ壊してくれる。改めて胸が一杯になる。自己嫌悪も温かい気持ちになる。
俺も返したい、彼が好きだって言ってくれた以上に、好きだってことを伝えたい。気持ちよくなってもらいたい。

 「あー…今度言ったら噛みきるからな。」
 「はい…あ、続けていい?」
 「そこはめげないのな…。」

彼が呆れたみたいに笑う。頭は痛いが股間も痛くて、とか言ったら蹴られそうだ。





 「ん、あ…、はいっ、…た…」

正上位で全部彼の中に沈める。彼は繋がった部分を見ていた。ひくひくと中に誘う内側の肉に、意識を持っていかれそうだ。彼は頬を真っ赤に染めて、うっとりといった表情で俺を受け入れてくれる。
そこで思った。別に役に立つとかいう言葉に他意はなく、彼が気持ちよくなってくれるのに役立ちたかったんだと気づいた。それから派生的に彼が気持ちいいことが気持ちいいのだと理解した。

 「さっきの話だけど、」
 「っあ、あ、ん、なに…?」
 「役に立つとか、間違えた、普通っ、に、気持ちよくなって、もらいたかった。それだけ、だった、っ」
 「はっ、っ、よろしい。」

お互いぜーぜー言ってんのに、なんでこんなことばかり気になるんだろう。気持ちいいだけではない繋がりを感じて、胸が熱くなる。この人と一緒になれて、本当に良かった。改めてそう思った。
彼の手を取って、自分の背中に回させる。

 「愛してる。」
 「っあ!ん、ん…は、俺も、愛してる、っはぁ、はっ」

どうしてかな、またどうにも泣きそうな気持ちになった。
俺は世界一幸せなお嫁さんに永久就職出来たみたいで。彼を世界一幸せな旦那さんにしてやろうと誓って、新しく誓いのキスをした。



おわり

僕の奥さん!トップ



prev next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -