好きにすれば良い [ 1/2 ]





「兵長!キスしてください!」

「ふざけんなテメェ、そんな汚らわしいことするか」


手懐けたつもりなんてまるでなかった。
人間でなくなったこいつを、俺はいつでも殺せる覚悟があったはずだった。

それなのにこいつはそんな俺に怖じ気づいたりもせず尻尾をふる犬のように俺についてまわり、挙げ句には俺を好きだと言い出した。


「いつになったらしてくれるんですか…」

「永遠にしねぇ、クソガキが」


手懐けたつもりなんかなかったのに、こいつは俺の部屋にきては毎晩毎晩俺のベッドで俺にねだる。
最初は摘まみ出していたが、それさえもしなくなった自分がいたのもまた事実であった。


「俺はもう寝る。テメェもさっさと地下牢に行け。」


「………」


いつもこの言葉を投げ掛ければこいつも諦めたようにして俺の部屋から出ていく。
だが、今日のこいつの様子はいつもとは異なっていた。
部屋どころかベッドの上からも退こうとはしない。

「…おいエレン、どうした」

さすがにおかしいと思い、俺のベッドから動かなかったエレンの元に近寄ると、エレンはいきなり俺の腰に手を回しては自分の方に引き寄せてきた。

「…何だ」

「……すいません、兵長…」

「だから何が、だ……んっ…!?」


“すいません”

そう言ったエレンの表情は何かに耐えているような顔で。
だから、まさかいきなり唇を奪われるだなんて思ってもいなかった。


「っ…テメ…エレ…っんんっ、ぅ…」

「…兵長…ごめんなさい…オレ…止められない…」


エレンは15歳のくせして強い力で俺の腰を左手で掴み、右手を俺の後頭部に回しては逃がさないとでも言うように執拗に唇を重ねる。

何言ってんだこのクソガキが
情欲にまみれたそんな瞳で見んじゃねぇ

15歳に本気になんかなる自分を認めたくなくて毎晩追い払っていたのに。
なんでこいつは易々と俺の中に入ろうとする。


「っ…おい、エレンっ……!」


止めろ、掻き乱すんじゃねぇ

そう言わず、止めろという意で睨み付けてやったが、エレンはそんなのも介さず俺のベルトを外し始めた。


「テメェ…今自分が何してんのかわかってんのか…」

「わかってます。ずっと…ずっとオレ…兵長にこうしたくて…だから、殴られても蹴られても構いません…」


“オレはリヴァイ兵長が大好きです”


真剣な瞳で見つめられれば見つめられるほど、俺はどうしてもこいつに逆らえなくなる。
こいつが持っているこの素直さが、俺には眩しくて見ていたくないからだ。

エレンを目の前にすると、こんなに素直になんかなれない自分が無性に恥ずかしくなる。
好きだと認めたくない自分さえも、こいつの言葉を聞けばもう消え去るようにして。
ただ、こいつが好きだと嫌でも気付いてしまう。


「……兵長…?」

「……きに……」

「…え?」

「…好きに…すれば良い…」


俺はエレンに抵抗するのを止め、そう呟いた。
最初は首を傾げていたエレンも、俺のその呟きに驚き、その言葉の意味を問うようにして俺の顔を覗いてきた。


「…あの…それはどういう…」

「………チッ…だからガキは…」


濡れた唇を自らもう一度重ねる。
15歳のガキの色香に負ける自分も、もしかしたらガキなのかもしれない。

エレンのまだ穢れを知らなさそうな柔いピンクの唇を挟み込みながら、俺はエレンの腕にそっと抱かれていった。




─END─



20131024

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