残像



「この戦いが終わったら
、お前に言いたい事があ
るんだ。」
照れたように笑った後、
勢いよく戦場へ飛び出し
ていった平助の背中が、
今だに瞼の裏に焼き付い
ている。つい半刻前まで
温もりに満ちていた平助
に、冷たい体温は似合わ
ないと思った。私を見つ
めていた瞳は閉ざしきっ
て開く事はない。優しい
、温かすぎる程の温もり
は、今やその面影もない
。柔らかい、私の好きな
彼の匂いは、私の嫌いな
血の匂いに塗り替えられ
ていた。いつも小動物の
ように動きまわっていた
その体は、石のようだっ
た。
(即死だったらしい)
遠くから聞こえる誰かの
声は、もやがかかったよ
うにしか聞こえない。そ
っと、冷たい頬に手をの
ばした。
「どうしたの?戦いは終
わったよ?」
そう、戦いは終わった。
これからまた、皆で一時
の平穏を過ごせる。でも
私には、君が居なきゃそ
れは何の意味も持たない
んだよ。
「ねぇ平助、言いたい事
って何?」
数刻前、確かにこの口は
私に伝えたい言葉がある
と紡いだ。
「…目、開けてよ」
いつもは私の願いはすん
なりきいてくれるのに。
「私を見て、私の名前よ
んで、私の手、握ってよ
、ねえ平助…!」
返事は、ない。最小限の
願い事さえ、平助が叶え
てくれる事はなかった。







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