偽りの幸福



いつものように戯れ、いつものようにじゃれつく。
仲の良い友として接してきた二人。
だが時折感じるのは張飛の熱を含む瞳に夏侯淵は惹かれる。
見ていると胸がときめくのは何故だろうか。

そんなある日。
張飛はゆっくりと夏侯淵に近づく。

「妙才…」

ゆっくりと重なる唇は酷く熱を持っていた。
夏侯淵は突然された行為にきょとんとした。
そしてやっと自分に何をされたのか自覚する。
顔を真っ赤に染める夏侯淵。
最初は反応がない夏侯淵をただ黙ってみていた張飛は焦った。
「俺とじゃ嫌か?」
「え?嫌いじゃないけど、俺は…」
「じゃ、またしても良いよな?」
「翼徳…」
張飛は夏侯淵の頬に口づけて首筋に顔を埋める。
「あ…どうしたんだ?何かあったのか?」
「一人が…寂しいからかもな」
熱を持ちながらも何故か苦しげな表情を浮かべる。
「だから、側にいてくれ妙才…」
「いいよ、翼徳が安心するまで側にいてやるよ」
「すまねえな、妙才。恩に着るよ…」
張飛は夏侯淵に感謝する。
偽りの幸せが長く続く訳ではないのに。
その温もりを手放したくなくてその身体を強く抱きしめる。
彼の優しさにつきいれてその愛情を貪る己は餓えているのだ。
本当の愛情に。
いつか彼等が自分に愛情を注いでくれる事を切に願う。
だからそれまでは彼に甘えよう。
「妙才…好きだぜ」
「俺も翼徳が好きだ、ずっと仲良くしような…」
「ああ…」
張飛は微かに痛む胸を押さえ微笑みを浮かべた。

それが偽りの幸福なのだと彼は気づかない。

気づかないで欲しい。

でも好きだと言う想いは本当だから。

だから暫くは側で笑って過ごせばいいと思った。





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