華香



身体に触れた時に感じた微かな華の匂いに張遼は驚きを隠せなかった。
清楚なイメージが強い曹仁から華の匂い。
可憐な少女が使うような香。
その匂いは張遼の欲望を煽るには充分であった。
「曹仁殿から不思議な匂いがするな…」
「そうかな?殿から貰い物の香を焚きしめたのだが」
曹仁は気にしてはいない様子で呟く。
「誠に不思議な良い匂いだ…まるで男を誘うようだな」
張遼は曹仁を抱き寄せ、その身体に香る匂いを嗅いだ。
けっして悪くもない心地好い匂いに張遼はずっとこうしていたいと思った。
「何をいたすか張遼殿?離して下され…」
「いいえ、離したくはありませぬ」
「張遼殿…」
曹仁は困ってしまった。
男を誘うような匂いだと張遼は言った。
だが、自分はそんなつもりで香を焚きしめた訳ではない。
やはり人前に出るのだからそれなりの身嗜みは必要だからだ。
「こら、もう離して下され。張遼殿、戯れは止して下さい!」
「戯れなんてありませぬぞ…拙者は曹仁殿が好きですから。ずっとこうしていたい…」
「なっ、張遼殿。いきなりそんな事言われても…」
張遼の言葉に曹仁は焦ってしまう。
突然の告白に戸惑いながら顔を真っ赤に染めた。
顔を染めた曹仁の姿に張遼は可愛いと思った。
「本当に貴殿は愛らしい方だ。こんなにも拙者の心を惹きよせてならない」
「そんなつもりは…」
曹仁は張遼の顔を見るのも恥ずかしいのかそっぽを向いてしまう。
「子孝、好きですぞ…」
「張遼…」
張遼は曹仁にゆっくりと口づけた。
その触れ合う感触はあまりにも心地好い。
嫌悪感を感じさせなかった。
張遼が唇を離すと曹仁を腕の中で抱きしめる。
「はぁ…張遼っ」
「いつかは拙者の気持ちに応えて欲しい。今は無理でも」
「張遼…」
貴方の香る匂いが心地好くて安心する。
ずっと己の側にいて欲しいと願わずにはいられない。
いつか必ず貴方を自分のものにしたい。
貴方に惚れた弱みと言うものか。
張遼は曹仁を見つめながら笑顔を浮かべた。
「張遼…もう離して下され」
「ああ、すみませんな。引き止めてしまって…」
張遼は曹仁を離した。
張遼の腕の中から解放された曹仁の胸は高鳴り鼓動が早鐘のように撃ち込み続ける。
未だに顔が紅いのがわかる。
先程の行為を思い出すとまた顔が紅くなっていくのがわかる。
曹仁は耐えられずその場から逃げ出すように走っていた。
そんな曹仁の姿に張遼はやり過ぎたと思った。
本当に可愛いものだ。
どんどん彼に惹かれていくのがわかる。
こんなにも彼を好きで愛していると気付かされたのだ。
こんな事になるとは、本当に自分のものにしたくなる。
「愛しい人よ、今度は逃がしませぬぞ…」
未だに身体に残る曹仁の匂い。
張遼はそう誓って曹仁を想う。
ただ、愛しくて好きな人を側にいたいと願わずにはいられなかった。





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