春蠱



季節は巡る 総ての命の元に

罪そのものである 命にも 平等に

まるで 神が 最後の慈悲を 与えたかのように

暖かな風が 命の種を 運ぶように

この地にも 花を湛える。

「綺麗なものだな…」
「それはこの花の事ですかな…?」

曹仁は両手一杯に花を摘んでいた。
それをホウ徳が見ていた。

咲き誇る花は 美しき香りを 漂わせる
総てをとろかす ような香り

多忙な 自分達にも
見せてくれる 彩

贖罪の中で 生きていた自分達に 一時の安らぎを与える

「確かに花は綺麗だけど…貴方も綺麗ですよ、曹仁殿」
「そうですか?殿の命とは言え花摘みとはいささか滑稽だな…」
「私は貴方が摘む姿は綺麗だと思う。たまには気晴らしになって良いと思うぞ」
「女性が摘むならまだしっくりくるのにな」
「ああ、そうだな…」

平和なんて 私達には 本来 不要なもの

自分達は いつかは滅ぶ存在 

どうして 人は 要らないモノを 造りそして 壊す(捨てる)のだろうか

欲望によって 摘まれたこの命(花)は儚く 枯れる

だから 我等も その時までに 生き延びて いこうと 誓った

「ねぇ、このぐらい摘めば殿は喜んでくれるであろうか?」
「そうですな、充分摘めたから持って帰りますか」
「ああ…」

曹仁は最近よく笑うようになった。
それは環境が変わり感情が表に出しやすくなった。
そして自分も一緒にいて愛しさが芽生える。
彼も自分に微笑む時が何よりも幸福を感じるのだ。

一緒に 生きようこの一時を

ただ この手を 握って歩もう

貴方の笑顔が 力となる

貴方の心を知り 愛を歌う

ずっと 四季を 幾度も繰り返し 生きて行こう

二人 一緒に





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