忠飛
戦場で戦うその姿に一目見て心を奪われた感覚がした。
最強と呼ばれた己を震わせ感化させたのは、今までいない。
これほどの力を持っていながら、同じ時間に生きていないのが悔やまれる。
今はオロチと言う敵が空間を時空軸を歪ませて創られた世界にいるからこそ出会った奇跡。
ずっと一緒にはいられない。
それが悔しい。
「張飛殿…」
愛しさを込めて名を呟く。
「なんだ、忠勝…?」
笑顔を浮かべ振り返ったそなたは血に塗れていても狂気に満ちた瞳は己をちゃんと見てはいない。
「張飛殿は某を信用しているか?」
「何の事だ?」
「張飛殿は自分だけで物事を解決しようとする。拙者が側にいるのに何故だ」
「…俺は弱いからだ。強さなんかよりも心が弱いからただ守りたいのに、必死なだけだ」
「なっ!?」
張飛からの意外な言葉に忠勝はただ、信じられなかった。
己と同じ強さを持つ男はただ、弱いからと言う。
「でも、隠していてもいつかはバレるんだよな。兄者達は感がいいからよ」
「なら、今だけは拙者が張飛殿を守る槍となろう」
忠勝は張飛を抱きしめた。
愛しい人を守れるのなら命を懸ける事もできる。
「忠勝…恥ずかしいから放してくれ」
「断る、張飛殿は拙者の大事な方だから側にいさせてくれまいか?」
真剣な眼差しに張飛は溜め息をついた。
「わかったからそんなに見つめるな…」
恥ずかしいのか目線を逸らした張飛に忠勝は張飛の頬に掌で包み張飛を自分の方へと目線を合わせた。
「拙者は張飛殿を愛してる。だから逃げないでくれ」
「忠勝…」
「あなたを離さない、拙者の愛しい翼徳…」
忠勝はゆっくりと張飛に唇を落としたのであった。
終
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30th.Dec.2014
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