操仁
寒い、痛い。
どうしても冬になると身体の節々が痛みを伴う。
戦場で受けた傷は特に痛む。
自分は盾と矛で敵をのしてきた。
曹操の為に奮闘した結果、身体にはいくつかの傷を受けた。
戦場で受けた傷は誇り。
勝利の為に受けた傷、恥もない。
周りからは影であらぬ事を言われる。
曹仁は気にもとめない。
全ては曹操の為に受けた傷なら甘んじて受けよう。
曹操は傷だらけになった自分を嫌う事はなく、受け入れてくれた。
優しい声で話、自分を励ましてくれた。
抱きしめてくれた曹操に更なる恩義を感じた。
ああ、自分はこの方の為なら命など惜しくない。
この方の為にこの身を捧げようと更に思うようになった。
「子孝よ、また傷が増えた…」
「殿…」
「痛むのか?」
「いえ…」
「あまり無理をするな…、儂は子孝を失いたくない…」
「はい、善処します…」
「約束してくれ、無理はしないと…」
「はい…」
貴方を欺くようで心苦しいが守れる為に受けた傷は受けると誓った。
貴方が望む事なら従いたいものだが。
上手くいくかわからない。
「子孝…、生きてくれてありがとう」
「…殿?」
曹操は曹仁を抱きしめた。
「お主を抱きしめていると生きていると感じる…」
「そうですか…」
「だから無理はするな…」
「はい…」
寒い、寒い。
痛い、痛い。
でも、帰る場所があるなら生きて帰ろう。
愛しい貴方の為に。
「愛してます。孟徳…」
曹仁は曹操に思い伝えたのであった。
終
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21st.Oct.2013
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