遼仁
(軍人パロ)
「張遼…」
声がする。
反応して顔を上げる。
『なんでしょう、曹仁大…佐…』
そこにある主の顔が曇っていて。
なにか悪い事をしたかと思いを巡らす。
『曹仁大佐…あの…』
「っ…よかった…」
そう言って主…曹仁がナビごと俺を抱き締めた。
なにがなんなのか分からない。
『あの…大佐…?』
「ん?」
『どうかされたのですか?』
「ん…ちょっとな」
逞しい腕から解放され、やっと曹仁の顔が見えた。
先程よりはマシになったが、やはり表情がくらい。
『曹仁大佐?』
「…夢を見たんだ…」
ぽつり、と言った。
「夢の中で犯罪が起こって…張遼が殺されてしまった…」
ぽたり、と涙が落ちた。
「俺はなにも出来なくて…ただお前がいなくなった拳銃を握り締めることしか出来なくて…」
『…曹仁大佐…』
電子画面に涙が落ちる。
触れないのにそれに手を伸ばす。
透明な水の塊がユラユラと揺れていて…
とてもキレイだと思った。
『…私はここにいます』
「張遼…」
『私はずっと貴方のお側にいます。勝手に殺されません』
きゅ、と口元を引き締める。
『それに貴方の指示が、私をそんなことにさせるハズがありません』
じっと曹仁を見つめる。
こんな不安そうな曹仁の顔なんて、きっと誰も見たことないだろう。
『私は、“鬼神”張遼です。そして貴方は“鉄壁”の曹仁でしょう?』
「…張遼…」
『私は…絶対、貴方の側からいなくなりません』
微笑んだ…つもりだった。
でも頬を伝うなにかを感じて、きっと俺はいまの曹仁のような顔をしているのだろうと思った。
「私の側にいてくれ、張遼」
『はい、ずっとお側に…』
そっと画面越しに、キスをした。
永遠に、貴方のお側に。
それが俺がやるべき、絶対任務。
張遼は誓いを立てた。
曹仁と共に生きるのが役目だと気づいたからだ。
「ならこの任務を早く終わらせ張遼の元に帰らないとな…」
『ええ、私は待っています。貴方が無事に帰ってくる事を』
「ああ、帰ろう。約束する…」
曹仁は約束を交わすと、再び任務を続行したのであった。
終
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5th.Jun.2011
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