遼仁
突然、張遼の力強い腕に抱きしめられ曹仁は困惑した。
「曹仁殿、樊城にて関羽殿にやられたと聞いたが無事で何よりです…心配しましたぞ」
「ああ…張遼、すまないな心配掛けて。傷はそこまで酷くないから大丈夫だ」
曹仁は抱きしめてくる張遼に微笑む。
「関羽殿に、酷い目に合わされたと聞いたが身体は大事ないか?」
「ああ…少し疲れたがゆっくり休めば平気だ」
「本当に?」
「何故、そんなに聞いてくるのだ張遼…?」
不思議に思い、曹仁は張遼に尋ねる。
「だが、曹仁殿の首筋に…痣が出来ている」
「痣だと?」
「ああ…」
張遼の言葉に曹仁は樊城での戦を思い出す。
確かに関羽と一戦交えた。
確か、関羽の青龍刀が首筋に掠めたのは覚えている。
「問題ない。これは武器が当たった時の痣だ」
「なら、本当に関羽殿とは何もなかったのか?」
「くどいぞ、張遼…私はふちらな想いを関羽殿には抱いてはいない。相手は敵だぞ…」
心配そうな張遼に曹仁は宥めるように呟く。
「私は曹仁殿が好きなのです。貴方は無茶をするから心配なのです…」
「すまない…張遼」
曹仁は張遼の腕の中で呟き身体を委ねた。
「貴殿の言う通りだ。私は無茶をしてまでも樊城を守りたかった…」
「曹仁殿…」
「結局は無駄な足掻きなのはわかっていた…呉の協力が無ければ城は落ちていただろう」
「それでも貴方は立派に役目を果たしたのだ…後悔しないで欲しい」
「張遼…ありがとう」
曹仁は張遼の背中に腕を回し抱きしめる。
「今は私がおります。だからゆっくりと休んで欲しい…」
「なら、今日は側にいて欲しい。張遼がいるなら何もいらない…」
「ええ…曹仁殿の側にいますから安心なされ」
「すまないな…それにありがとう…」
「礼は良いですよ。貴方が無事なら私も嬉しいですぞ」
「張遼の優しさに甘えさせてもらおう…」
曹仁は張遼の側でその日を過ごしていったのであった。
終
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20th.Oct.2011
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