惇淵
暑いこの時期には珍しく大量の雨が降り雷が鳴り響く。
そんな外の光景を夏侯淵は黙って見ていた。
雷が鳴る度にびくびくしながらも綺麗な光が空を走る様は美しいと夏侯淵は思った。
部屋で一人でいた筈なので扉が開く音に夏侯淵はびっくりして悲鳴を挙げる。
「ひやあああっ!!」
「どうした淵!何があったのか?」
部屋に入ってきたのは従兄の夏侯惇であった。
「何だ、と、惇兄だったのか。驚かすなよな!」
夏侯淵は夏侯惇の姿を認知すると文句を言う。
「すまん、驚かすつもりはなかったんだが…」
理不尽に怒られる夏侯惇は夏侯淵を何とか宥めると夏侯淵は要約落ち着いたようだ。
「何をしてたんだ?」
「ああ、窓の外を見ていた。雨が凄く降っている様子だから…」
「ああ、雷も鳴って酷いものだな…」
二人が言葉を交わしていた時、突然大きな落雷の音と共に部屋を明るくする光が空から放たれた。
「うわああんっ!」
夏侯淵は落雷の音に驚き夏侯惇に思わず抱き着いてしまう。
年甲斐にも30近い男が雷を嫌う姿は何故か可愛いと夏侯惇は思ってしまった。
「淵、相変わらず雷が苦手だな…」
「だってあんなに激しい音をして落ちると怖いじゃないか!」
「まあ、見ている分は綺麗だと思うぞ」
夏侯惇は夏侯淵を抱きしめるとその背中をあやす様に撫でた。
「惇兄はよく平気だな…俺は無理だ」
夏侯淵は夏侯惇を見上げながら呟く。
そして縦光りの雷が大きな音を発した。
「うっひゃあっ!も、もう嫌だあ〜」
夏侯淵は雷の音にびっくりして泣き始めてしまう。
そんな夏侯淵に夏侯惇は部屋の中央にある椅子に連れて行き夏侯淵を座らせた。
だが、相変わらず夏侯惇を抱き着いたまま離さない夏侯淵に夏侯惇は溜息をついた。
「仕方ない奴だな。雷が収まるまで側にいてやるからもう泣くな…」
「本当か惇兄…」
「ああ…」
夏侯淵はやっと笑顔を浮かべた。
その笑顔に夏侯惇は惹かれてしまう。
昔から雷が苦手な従弟に自分は弱いと思う。
それは彼を愛しているからだろう。
この温もりを感じる事ができるならいつまでも側にいたい。
「淵…」
夏侯惇はゆっくりと夏侯淵に口づけを落とした。
「んっ…んう…」
夏侯淵は夏侯惇の口づけを受け入れるとその背中に腕を回して引き寄せ更に行為を深めていく。
幾度となく口づけを繰り返す二人は雷の音等、気にしてはいなかった。
夏侯惇がやっと唇を離した頃には夏侯淵はぐったりして夏侯惇に寄り添う。
「大丈夫か淵?」
「んっ…惇兄…」
「何だ?」
「もっと…もっとしてくれよ」
夏侯淵の意外な言葉に夏侯惇はクスっと微笑む。
「お前が望むままに…」
夏侯惇はそう言うと夏侯淵に口づけを再び落としていった。
雷の音等、もう気にしてもいない様子で二人は愛しあったのであった。
終
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30th.Jul.2011
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