ホウ仁
…昔から
何かを望む前に
欲しかったものは
何でも手に入った。
そんな俺に人の気持ちはそうでないと
教えてくれたのは
彼女だった。
『子孝…私、結婚することになったの。よろしければ是非とも式にいらして下さい』
好きだった彼女(おんな)が全てを打ち明けた。
だが────
俺が彼女を愛したように彼女は他の男を愛した。
彼女を忘れようと
その後も数えきれない数の女性と関係したが満たされることはなくもう二度とあんな風に誰かを愛することはないだろうと────
そう想っていたはずだった…。
「曹仁、目が覚めたか?」
「─────……っ」
「よく眠っていたので声をかけなかったが、たまには空気を入れ替えないと思ったが寒いなら窓を閉じた方が良かったか?」
「いや…構わん、それよりホウ徳…」
「何だ?」
「こっちに来い…」
ホウ徳は言われた通りに曹仁の元に来る。
「どうした?」
「もっと近くに来てくれ…」
…なのにまさか、こんな男相手にここまで本気になるとは。
本当に人の気持ちはわからないものだ…。
曹仁が口づけをするとホウ徳も応えた。
与えられる快楽に喜びを覚えて更に欲しいとホウ徳に媚びると彼は優しく応える。
この肉体は容易く手に入る事はできた。
それでも本当に
欲しいものはまだこの手には入らない。
「ホウ徳、少しは遠慮したらどうだ」
「何です、いきなり」
「激しすぎるぞ…」
「それほど若い証拠と思うが」
「加減しろ…腰が痛くて敵わん」
「せっかく二人きりなんだから雰囲気を大切にしたいんだが」
「野郎同士が雰囲気を気にする方がおかしい」
「二人っきりの時ぐらいはもっとこう…甘い雰囲気を感じたい」
「本気か…」
「でも貴方が求められるのは好きです」
なかなかしない曹仁がホウ徳を誘ったのだから余計に歯止めが出来なかった。
「それは…その」
「また貴方が誘って下さい…」
「全くお前と言う奴は…」
曹仁が溜め息をついた。
求めれば求めれば
ただ笑って受け入れる人形じゃないんだ。
それが偽りのない笑顔で曹仁を受け入れてくれる。
それがホウ徳の愛情の形だと言うのならそれでもいい…。
それでも俺は願う
ホウ徳…
お前とのこんな時間がずっと続けばいいと切に願う。
この幸せが
永遠に続きますように…。
終
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18th.Jun.2011
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