21

***








「腹減ってんだろ。何食べたい?」



二人で並んで里の繁華街を歩く。
一楽や甘栗甘などの人気店が立ち並ぶ通りなので人通りも多い。
少し面倒臭そうな態度をとるサスケだが、本当に嫌なら意地でも来ない奴だと知っているので気にすることもない。
何より俺が外食したい気分だったから、それが叶って俺は機嫌がいいのである。



「…今なら何でも食える」

「お前普段外食とかすんの?」

「―――…お前等と任務帰りに一楽に行くくらいしか、外で飯なんて食わねェよ」



だよなー、と俺が笑うとサスケはバツが悪そうに顔を顰めた。
木ノ葉で15年間暮らしてて一楽しか知らないなんて、別にそれが悪いとは言わないけど、どれだけ修行馬鹿なのかとサスケの一途さには呆れてしまった。



「そんなんじゃ彼女が出来ても碌にデートもできねーぞ。サスケくん」

「くだらねぇ」

「ま、いいや。俺もあんまり外食はしねぇんだけど、烈火がたまに連れてってくれるんだ。鉄板焼きが超美味いから、そこはどう?」

「ああ。オレは何でもいい。納豆と甘いもの以外なら」



たまーに烈火の紬が売れて給料が入ったりすると外食に連れて行かれる。
やきそばやらお好み焼きが大好きな烈火がオススメする店がそこで、烈火があまりに美味い美味いと褒めるから銀鳥も行きたがって、一度銀鳥に変化させて3人で食いに行ったこともある。
俺はサスケと違って案外木ノ葉の里を謳歌してる方だ。甘栗甘もサクラたちと行ってから何度も買いに入ったし。(因の見舞いも買ったし)

何処の店が美味いとか、この店が新しいとか、一方的にサスケに聞かせてやりながら歩いていると、「お、名前じゃねぇか」と突然正面から声がかかった。
目線を正面へ向けるとそこには不知火ゲンマが俺とサスケの顔を見比べていた。
彼とは待機所で何度も顔を合わせている。カカシとよく絡んでいるので話す機会も多い。



「サスケと一緒なんて珍しい組み合わせ…―――でもないのか。お前等同じカカシさんの班だったな」

「はい、丁度修行帰りです」



この男はその他多数の男達と違って、女を特別扱いしない。女だからと言って容赦もしない。
それが冷たくて苦手だというクノイチもいるらしいが、俺は忍として皆と対等に接してくれるこの人が気に入っている。
ゲンマは千本を咥えたままサスケを眠そうな目で見下ろしてニヤリと笑った。



「暗部入隊試験を受けるんだってな」

「まあな」

「そんな回りくどいことしねぇで、さっさと上忍に上がってくりゃいいのに。上忍になる実力には申し分ねぇんだぜ、お前」

「正規には大した奴がいねぇだろ。退屈は御免だぜ」

「フン、生意気な奴だ。まあ確かに暗部にゃ槍刃だ銀弥だって強者がゴロゴロいやがるし、お前には持って来いなんだろうな。しっかりやれよ」



サスケの肩をポンポンと叩いて、じゃあな、と立ち去って行くゲンマが「ああそうだ、おい名前」と再び振り返る。



「サスケは試験前で忙しいんだから、あんまりワガママ言うなよ。修行みて欲しかったらオレに言え。付き合ってやるからよ」

「…、……え?」

「じゃーな」

「ちょ…、えっと……ゲンマさ…」




大きな勘違いをしたままゲンマさんは去って行った。

“サスケは試験前で忙しい”?“わがまま”…?

つまりは、試験前のサスケが已む無く俺のワガママに付き合って修行を見てやってるみたいになってるらしい。
(何故…!?)
俺は上忍、サスケは中忍。
どう考えたって俺がサスケの修行を見てやってると思われて当然の筈だ。俺の方が上なんだから。
心外だ。ものすごく心外だ。



「俺上忍、お前中忍。…おかしいよな今のセリフ」

「お前の方が弱そうに見えるからああ言ったに決まってんだろ」



サスケが愉快そうに肩を震わせ笑いながら言う。



「俺弱く見えんの?お前より?」

「そうムキになんなよ。女だから仕方ねぇだろ。まさかお前が銀弥だとは知らねぇんだしよ」



不服そうにブスッと顔を顰める名前の隣でクックッと笑い続けるサスケ。
通りかかった数人のクノイチがそんなサスケを見掛けて「うわ、サスケくんが笑ってる」と囁き合っていた。
「珍しい」やら「可愛い」やら散々騒いだあと、隣の黒髪誰だよと俺の愚痴になっていった。これぞ女の性質である。



「あ、おい、サスケ?」



クノイチたちの方へ意識を向けていた俺は、突然立ち止まったサスケに気付くのが遅れる。
振り返ってみれば八百屋の前にて立ち止まってじーっとトマトを見つめているサスケがそこにいた。

こいつがどれだけトマトが好きなのは、サクラから鬱陶しいくらい何度も聞かされて知っている。
だけど普段から毎日トマト食ってんだから今回くらい我慢しろとサスケの後ろ首を掴む。
俺は今ものすごく外食したい気分なんだ。トマト買って帰って家で食うなんて嫌だからなと先んじて忠告するが、サスケの意識が今度は隣の魚屋の美味そうに脂の乗った鯖に向いた。



「なあ名前」

「何」



やっぱり外食はやめて、お前ん家でトマトと鯖味噌が食いたい、なんて…

きらきらした目で言われてしまえば、俺は鉄板焼きを諦めざるを得ないのだった。








[ 241/379 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -