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「遅い」
「間隔開けねぇとおかしいだろ?二人で抜け出すなんて」
宿の庭園の中、小さい喫茶場になっているベンチに腰掛けていたサスケ。
浴衣姿がやたらと様になっている。
よく此処が分かったなと言われたが、小さく笑って誤魔化しておいた。
「で、なに?告白か?」
「阿呆か。あの場にいたくなかっただけだ」
そんな理由で俺も巻き添えにされては堪らないが、少しは頼ってくれている様なので甘受してやる。
サスケの隣に少し距離をおいて腰かけた。
「五月蝿いのは苦手そうだもんな、お前」
「……。」
「それとも、直に別れる仲間を見てるのが辛かったか?」
「……本当に…恐ぇ奴だよな、お前」
フッと息を吐いて笑ったサスケ。
…もう、決心がついたらしい。
―――里を抜ける、決心。
「俺の事くらいで恐がってたら、大蛇丸とはやっていけねぇぞ」
「…アレは次元が違うだろ」
イタチの実力は一度この目で見た。
大蛇丸とは一戦交えたこともある。
だからこそ分かる、二人の実力の差。
大蛇丸から学び、超えたところで、イタチには到底及ばない。
「オレはイタチを殺す」
「ああ」
「その為に、力がいる」
「…そうだな」
もし俺が、今ここで正体を明かせば、…大蛇丸よりも実力が上であると示せば、サスケは里抜けを止めるだろうか。
何度も思った。
…だけど、もし俺がサスケなら…
「…止めねぇのか」
己と同じ下忍だと思っていた同僚に、突然素性を明かされて尚且修行をつけてやろうか、なんて言われたら…。
きっと、俺なら意地でも里を抜けてやる。
…負けず嫌いだから、きっと素直になれないだろう。
サスケも、恐らく同じ質だ。
「何で俺が止めるんだよ」
「…それもそうだな」
何より、サスケには里を客観的に見る目が要る。
こいつの世界は狭すぎる。
“うちはの末裔”という運命を背負ったサスケにとって、大蛇丸の元に行く事で学べるものは数知れない。
―――例え、大きなリスクを伴うとしても。
「この任務が終われば直ぐにでも里を出る」
「……それ、俺以外にも誰かに言ったのか?」
「お前だけだ。カカシやナルトに言えば面倒になるに決まってる」
少なからず、俺を頼って貰えた事に優越を感じる。
だが、俺が出来る事は……こいつが己の決心の実行の下に里を抜けた時、進むべき次の道標を示してやれる事くらいだ。
「……面倒だっただろ。悪かったな」
「何が?」
「こんな事、言われてもよ」
「…………。」
「でも、何故かお前には話す気になった。お前には…知ってて欲しかった。だから…」
サスケの声が紡ぐ言葉一つ一つが胸に響く。
―――嬉しかった。
「サスケ、一つだけ誓え」
「?」
「イタチに手を掛ける前に、大蛇丸を消せ」
「…理由は?」
「そのうち、教えてやる」
腑に落ちない様子のサスケだが、一度しっかりと頷いた。
それを見届け、じゃあなと軽く手を上げて背を向ける。
…少しでも、サスケの力になれれば。
何よりも強く、純粋にそう思えた。
その為なら、もっと強くなれる気がする。
これが仲間というやつなのだろう。
―――そうだろ、爺ちゃん。
夜空を見上げれば……満月だった。
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