18

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新たな火影を連れ、無事里へ帰還した俺達。
サスケとカカシの意識が未だ戻らないらしく、その足でナルトと綱手と共に木ノ葉病院へ向かう。
あの木ノ葉崩しの恥辱以来初めて訪れた木ノ葉病院に顔を顰めた。



「ナルト!男装名君!」

「おうサクラちゃん!すげぇ人連れてきたからもう大丈夫だってばよ」

「え?」



ベッドに横たわるサスケの傍に腰掛けるサクラが、病室へ入ってきた綱手を見つめる。
ツカツカとサスケに歩み寄った綱手がその額に手を翳した。
掌から淡い光が放たれ、サスケの瞼が僅かに反応する。
―――流石三忍の紅一点…。





「うっ…」

「サスケ君ッ!!」



目を覚ましたサスケに抱きつくサクラ。
呆然と一点を見つめるサスケにいつもの覇気はない。
この先、サスケが無事に立ち直れるかどうかが気掛かりだ。
力を求めて耽溺しなければ良いのだが。



「しばらくは絶対安静だ、そうすれば直ぐ良くなるよ」

「…っはい!ありがとうございます!!」



綱手を敬虔の眼差しで見つめるサクラを少し眩しく感じながら、ナルトと綱手と共に部屋を出る。
去り際に振り返るとサクラと目が合って、ニコッと微笑まれたので手を振っておいた。







*****








「ったく、あんたも人の子なんだねぇ!」

「…ハハ、スイマセン…」



いつもの猫背がより一層丸くなり、サスケよりも覇気の感じられない男が此処にいた。
入口に突っ立った侭、その間抜けな画を見つめるナルトと男装名。
出来ることならさっさと帰りたい二人である。



「…あれ、男装名とナルト?」



カカシが眠そうな目を二人に向ける。
珍しくもナルトと男装名の溜息が重なった。



「もういいだろ。オレは帰るぞ」

「あ、待てよ。俺も帰る」



長旅から帰ってきて疲れてる時にこんな気の抜けた図を見せられて
心身共に気怠さを引き摺りながらぞろぞろと病室を後にする二人。
「オイオイちょっと待ちなさいよ!」と慌ててカカシは引き止めた。



「イタチから聞いた話じゃあ、暁はナルト…お前の九尾を狙ってる」

「暁とはオレも接触した。それで、何?」



オレが知らねぇとでも思ったか、とでも言う様に、カカシに見下げた視線を投げたナルト。
この男の情報収集能力に関しては男装名でさえも認めている程なのだ
カカシよりも情報を携えているというプライドがナルトにはあるのだろう。カカシもナルトの態度からそう感じた。
「知ってるならいいけどね」と苦笑したカカシに対し無言のまま再び踵を返したナルト。



「だけどナルト…気を付けなよ」



カカシの最後に付け加えられた一言にナルトが扉に手を掛けたままピクリと動きを止める。
“気を付けなよ”なんて…プライドの高いナルトにとっては侮辱に聞こえたに違いない。事実、彼の実力はカカシよりも遥かに上なのだ。
傍から見ていた男装名と綱手は内心「あーあ…」とこの先のナルトの動向を案じているのだが、それに気付けないカカシは言葉を続けた。



「特にイタチ…あいつは危険だ」

「…」

「幾らお前でも…手強いぞ」



ナルトがこちらへと振り向く。
カカシへと向けた眼差しには…予想に反して殺気はなく、それどころか満足そうに、そしてどこか誇らしげに碧い目を細めたナルト。



「―――…ああ、知ってる」



口元に笑みを携えて、そう一言だけ残すと静かに去って行った。






*****







カカシの言葉に怒った様子もなく去って行ったナルトに、意外だなあと内心驚きつつ
俺もそろそろお暇しようとカカシに目を向けたところ…バッチリと目が合った。
さっさと病室を出ていく綱手の後に続きたかったのだが



「ねぇ、名前…」



聞いた事の無いカカシの弱弱しい声に呼び止められ、ぎくりと顔を歪ませる。
いつもなら微塵の迷い無く放っておけるのに、それが出来ずに振り返る。
複雑な心境で睨めば犬にするように手でおいでおいでとされて、渋々ベットに歩み寄った。



「何?」

「サスケは大丈夫か?」

「……意識は戻ったけど、何とも言えねぇ」

「そう…。お前は?怪我はないの?」



一瞬、俺は言葉を忘れてきょとんと目を丸くした。
自分の心配をしてくれる言葉にまだ慣れない俺は、カカシの言葉を咀嚼できずに思考を一端止めてしまう。



「―――…ないよ。」

「ん、よろしい」



何が「よろしい」だバカ。
そんなこの上ない猫背でしかも覇気の無い声言われても困る。
寧ろお前の方が大丈夫なのかと聞きたい。
微かに眉を顰める俺に、カカシは頭を掻いて言葉を続けた。



「ナルトと上手くやってんのね」

「…そう見えたか?」

「うん、オレちょっと妬いちゃったよ」

「は?」



困ったようにアハハ…と力無く笑うカカシ。



「どんどん成長していくなあ、って思ったの。悪い?」

「爺臭いよ、お前」

「うーん、今のはキツイかなー」



らしくないカカシの弱音。
面倒な筈なのに、妙に嬉しかった。
俺の弱さを知ってるカカシの弱さを、全てではないにしろ垣間見れた。
―――少しは、頼りにして貰えているのだろうか。



「お前には…感謝、してる…」

「!」



カカシの目が驚きに丸く開かれるのを見て、俺はハッとする。
(俺は今何を言ったんだ…!)
口が勝手に口走ってしまった。
言うつもりなんて一切無かったのに…!
自分の顔に熱が上るのが分かり、居たたまれなくなって、カカシの呼び止める声も構わず瞬身で飛んだ。
残されたカカシはベッドに座ったまま茫然と男装名の消えた跡を見つめる。




「―――何あいつ、どんだけ可愛いの…」









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