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*****








何故、紫鏡は俺にチャクラを返してくれたのか。



あいつの一挙一動が釈然としないまま。
チャクラが戻り身体が普段通り動いたため
銀鳥と共に綱手とシズネを、ナルトは自来也様を、旅館まで担いで帰った。
シズネは自己治療で歩けるようになり、チャクラ不足でぶっ倒れた綱手は死んだように爆睡している。

…やっと部屋の空気が落ち着いた。



「…あの、」

「?」

「……女の子だったんですね」



シズネが複雑な笑みを浮かべて俺に言う。
そういえば何も話していなかったなと今更気づいた。



「身を隠す為なんだ」

「そうでしたか。…それでその人って」



目配せすると銀鳥は頷き姿を元に戻す。
突然人間から大きな鳥になった銀鳥に驚いた様子のシズネ。



「に、忍鳥ですか…!?」

「鳥ではない、妖魔だ」

「凄く…綺麗…」



シズネの反応に困却する銀鳥に笑って、腕輪に戻してやった。
綺麗だと褒められるのが苦手なのは昔から。
極度に照れて落ち着かないらしい。可愛い奴だ。
俺の左腕が淡く光って腕輪が現れる様子にも興味津々に目を凝らすシズネ。



「それにしても名前…お前、紫鏡と知り合いだと何故儂等に言わなかった?」

「……どうせ言ったところでそんな早急に呪術への対抗策は練れませんし、置いていかれるのがオチだと思いまして」



黒海に会いたい一心でかなりの無茶をしたという自覚はあるため、自来也様には素直に申し訳ないと詫びる。
するとナルトに鼻で笑われた。



「あいつの能力にお前が敵う訳ねぇんだから、態々付いてくる必要も無かったんじゃねぇの」

「…確かめたい事があったんだよ。それに…何処に居ようとあいつに敵わない事に変わりはないし、それなら…お前に身代りになって貰った方が安全だと思って」



“紫鏡の意識をナルトに逸らせる”
これが俺の勘案した結果だった。



「……あのな、ああいう演技は前もって打ち合わせしとけ」

「打ち合わせなんかしたら嫌がって逃げるだろ、お前」



目を逸らされた。
―――図星かよ。



「まあ、何はともあれじゃ…綱手は火影就任を受理したしのォ」

「え!綱手様が!?」

「どういう心境の変化か知らんがのォ!よかったな、シズネ」

「はい…!自来也様も」



一先ず綱手の容態を見て里へ戻ろうということになった。
自来也様の体調も宜しくないらしく、隣の部屋に移り治癒をするシズネを手伝った。
ナルトは窓辺で爆睡している。
シズネに、戦闘中の言葉が嬉しかったと伝えると、とても喜んでくれた。











*****










日が落ち、ナルトが無性にラーメンが食べたくなったとシズネと自来也様と一緒に出かけて行った。
少し気持ちを整理したくて狸寝入りで旅館に残った俺。
傍には綱手が寝ているが起きる気配は無い。


「………」


時計の針が進む音と、綱手の寝息と、外で鳴く烏の声
それ以外には何も聞こえない静かな部屋で、俺は畳に寝そべったまま天井を仰いだ。
頭を廻るのは、紫鏡のあの言葉

―――生きてるよ




「………黒海………」



生きているなら、お前は今何処にいる?
どうして迎えに来てくれない?
木ノ葉で待ってろって…言ったのはお前じゃないか。






「生きてるんだってね、黒海が」

「!」



突然掛けられた声の方へ目をやると、爆睡していた筈の綱手がのっそり起き上がった。
皺くちゃだった容姿は元に戻っている。



「木ノ葉を抜け、お前を国から攫い、数年後お前を取り戻しに来た一族の人間に襲われ……お前を木ノ葉へ逃した。それっきり消息不明」

「……。」

「死んだと思ってたけど……まあ、あいつの言葉も信用出来ないがな」



棚から酒を取り出し、布団の上に胡座をかいて猪口に注ぎながら呟く。



「…生きてるよ」

「どうして言い切れる」

「紫鏡は…ああいう嘘はつかない」



鼻で笑われたが、俺は言い切れた。
散々酷い目に遭わされてきたが、紫鏡とはもともと兄弟のように常に一緒にいた仲だ。
嘘を吐いてるか、吐いてないかぐらい……目を見たらわかる。



「お前の事に関しては色々と複雑だからな…何かあれば私に言うんだよ。これからは三代目ではなく、私の下で働いてもらうんだ。宜しく頼むぞ」

「……。」

「まあ、少しだったがお前の太刀も見させて貰った。流石銀弥だね、見くびっていて悪かったよ」

「綱手は、黒海が嫌いなんだろ?」

「ああ、嫌いだね」

「…………ダンゾウの部下、だからか?」

「!」



一瞬目を見開き、動揺した綱手。
酒を飲み下し、鋭い目付きで見つめられる。



「誰に聞いた?」

「ダンゾウ」

「……あの、クソ爺……」



ダンゾウに悪態を吐いた綱手。
ダンゾウに肩入れはしていないらしい。
それが解って少し安堵した。



「ダンゾウの部下だったけどね、三代目や四代目に良くなついてたよ」

「…そうか」

「私と結婚したいとか言って、私の恋人に良く苛められてたね」

「……女にルーズだったとは聞いてる」



一先ずダンゾウの部下だという点では心配は無用の様だ。
よいしょ、と一升瓶を手に提げて俺の向に腰を下ろす綱手。



「いい奴に育てられたね」

「!」

「私は嫌いだけどな!」



バンッと猪口を目の前に置かれ、酒を注がれた。



「よし、飲め!」

「……お前、身体はいいのか?」

「酒は良薬なんだよ、さあホラ!あいつが餓鬼の頃の話をしてやろう」

「え!ほんとか!?」










*****








「いやー、美味しかったですねぇ!わたし里外でラーメン食べたの初めてです!」

「オレは色々食ってるけど、一楽だな。やっぱりあそこは美味い」

「がはは!ラーメンの話になるとはしゃぎやがって」

「あ?誰が奢ってやったと思ってる」



久しぶりに会うナルト君はすっかり成長していて、まさかナルト君にご飯を奢ってもらえる日が来るなんて…と一人感激した。
綱手様と名前さんも連れていってあげたかったなあ…と部屋の前で立ち止まると、中から聞こえる綱手様の楽しそうな声。



―――ガラッ



「おお、シズネ!お前も飲め!名前が結構イケる口でねぇ…!」

「つ、綱手様!?ダメですよッ、何お酒なんか飲んでるんですかッ!」

「なんだい!酒は良薬って言うだろう?構いやしないさ!」

「構います!!名前さんも止めてくださいよ…!」

「おい綱手、さっきから自分の話ばっかじゃねぇか。黒海の話はどうした」

「黒海?誰だいそいつは?」

「…………酒没収」

「待ちなッ!私の酒だよ!!」








三代目が居ない木ノ葉で、ずっとお前を待ってるよ…黒海






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