03
樫本は僕の腕を無理矢理引っ張った。
やだね。まだ何も言ってないのに、決定権無しに勝手に連れて行こうだなんて。
「ほら、早く行こうぜ!!」
「え、やだ」
「…え?」
何そのキョトン顔。キモい。マジキモい。ムンクの叫びの顔よりキモい。どうしたら、そんなキモい顔出来んの?って程キモい。
コイツに惚れてる奴はきっと、こんなキモい顔を「不思議そうな悲しそうな泣きそうな構いたくなるような顔をしてる」って判断するんだろうか。
恋は盲目って言うけど、怖いねぇ
「な、何でだよ!?」
「え、だって普通に授業に出たい、からっ」
演技なう。
醜い顔を俺に晒さないで頂きたい。切実に。
「授業なんてどうでもいいじゃねぇか!俺ら親友だろ!?」
「どうでもよくなんてないよ?先生だって一生懸命、僕らに教えてくれてるし、僕にだって夢があるんだもん。夢を…叶えたいんだ、僕。」
僕、ちょー健気。夢なんて一欠けらもないんだけどね。寧ろフリーターでいいやって思ってるけど。自宅警備員にでもなろうって思ってるけど。
先生、感動してる。
分かるよ。皆真面目に授業聞かないもんね。例え偽りでも僕の言葉に感動したんだね。
うん。何かごめんね。
「何だ、そんな事どうでもいいじゃん!学生のうちは遊ばないとな!!」
……馬鹿だ。世界で一番、コイツが馬鹿だ。
それは義務教育まででしょ。いや、それも違うけども!!
「そんなっ!どうでもよくなんてないよっっ!授業は大事なのにっ、どうして樫本君は、わかんない、の?」
演技なう。涙を溜めて言って見ました。
「だって授業より遊びだろ!!?授業が大事なんて意味わかんねぇ」
うん。俺も勉強なんて消えてしまえと思ってる。
え?矛盾?知らないよ。演技なんだし…
モドル