01



突然だが俺は甘党だ。

俺の見た目は自覚済みで整っていて男前と言えるだろう。

学園からは俺様だクールだ言われ、学園の頂点に立つ生徒会長様。


そんな立ち位置にいる俺は甘党なんだ。

イメージに合わないだ、そんなの会長じゃないだの言われても俺は甘党なんだ。


今日とて昼食後のデザートであるチョコパフェを食べるためにウキウキわくわくしながら食堂に向かい、昼食が終わってキターー!とか思いながらチョコパフェを頼んで、ウェイターが俺をマジマジと凝視するのもスルーしてキラキラと目を輝かせて手元に来たチョコパフェをスプーンに掬い、さあ食べよう!とした時だった。



ガシャーン



「……」


チョコパフェが空に舞った。



何故だ。


原因は嫌でも分かる。それは最近転入して美形という美形を虜にしたアイツ。


「皐月!いくら風紀がムカつくからって殴ってはいけませんよ!!」

「だってアイツが俺を此処から追い出そうとするんだぞ!?贔屓なんてダメなんだぞ!!」


転入生はクラスメートの人気者や同室者だけならず生徒会の役員を虜にした。実は俺も言い寄られているが意味の分からない事を言って決め付けては「俺は分かってるぞ!!」とか言う奴だ。何が分かってるだ。


俺から友人も仲間も奪い、


そしてたった今、


俺の楽しみを奪いやがった。



「…ちょこ、…ぱふぇ…」


呆然とチョコパフェの残骸を見つめる。唯一、スプーンに掬ったチョコパフェだけが生き残りだ。

視界に風紀が写り、ゆっくりと体を起こす姿が見えた。


「転入生…っ残念だが贔屓ではなく規則だ。それは生徒全員理解しているはずだが…無能だったのか?」


ハッと見下すように役員達に言う風紀委員長の頬らには転入生に飛ばされた時に付いたのであろう、チョコパフェが付いていた。


チョコパフェ…っ


「うるさい!俺は良いんだよ!!俺は特別な…」
「うるせぇのはお前だよ馬鹿やろぉおお!!!」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ転入生の言葉を遮るように机を思いきり叩いた。


「…へ?え?な、棗?急にどうしたんだ?」

「おまっ!急も何も俺が楽しみにしていたチョコパフェをお前が風紀をぶっ飛ばした所為で悲惨な事になっただろうがあああ!!!俺の口の中に入ったのは一口分なんですけど!?まじ有り得ないから!!全国の甘党さんに土下座して謝れるぐらいお前は重い罪を犯したんだ!!てか謝れ!!まじふざけんなよ!!!」


息継ぎなしで転入生にそう言えば、食堂はしん、と静寂に包まれた。

皆唖然と口を開いて俺を凝視しているけどスルー。


「は、チョコパフェ?お前チョコパフェ好きなのか?」


呆然としていた転入生がキョトンと目を大きく開いて有り得ないとでも言うように口をワナワナと動かす。


「甘党全般好きだが?」

「はぁあ!?会長が!?似合わねぇよ!!」


別に今更内緒にするつもりなんてない俺はそう言ったが、転入生は納得いかないのか指を差して声を荒げる。

似合う似合わないなんて関係ないんじゃないのか?


「ハッ何だ、結局お前も見た目で決めるんだな。何が俺は分かってる、だ。お前は俺の何を分かってるんだ?仕事をしてないって?俺様やクールなのは親の愛情が足りないから?意味分かんねぇことぬかすんじゃねぇよ!俺はそこにいる役員の変わりに仕事を寝る間も惜しんでやっている!俺様やクールはお前らが俺の見た目や性格から決めた理想論だろ!!俺は親に愛情をちゃんと注いでもらっている!勝手な事を決め付けるな!」


今まで決め付けられた事でどんなに我慢して来ただろう。

周りから俺を雰囲気や見た目で決め付けられて本当は嫌だったんだ。もう、疲れていたんだ。


「っお前らの理想を俺に押し付けるな!!」


最後のは転入生だけじゃなく生徒全員に向けて言ったものだ。

今まで溜めてきたものを全部吐き出し、息切れをしている俺は心の重りがストンと落ちたように軽くなった。


「…副会長、会計、書記」

「は、はい!」

「…なぁに?」

「ん、」


役員を見れば緊張で顔が強張っているのが分かる。

あいつらは転入生に夢中になって仕事をしていなかった。それは許せない。


だけど…


「俺、お前らの事を今でも友人だと、仲間だと信じてる。」

「、っ」

「お前らのタイミングでいいから、生徒会室に帰って来い」


説教してやるから。

最後に付け足すように苦笑して言えば、役員の顔が泣きそうに歪んだ。


「はいっ」

「あり、がとぉ」

「っん」


何度も何度も頷いく役員がおもしろくて俺は笑った。














チョコパフェの恨みは海より深い
((まず初めにチョコパフェについて説教しなきゃな…))

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  モドル

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